2011 Fiscal Year Annual Research Report
Sykキナーゼ阻害による神経変性疾患(アルツハイマー病等)の予防と治療
Project/Area Number |
21590106
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
大室 弘美 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (00124470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 泰造 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (70346253)
氷見 敏行 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (30222243)
吉田 ルシア幸子 武蔵野大学, 薬学研究所, 助教 (20240327)
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Keywords | 神経生物学 / 抗炎症作用 / 創傷治癒 / 抗酸化作用 / アルツハイマー病 / パーキンソン病 |
Research Abstract |
炎症性細胞からのサイトカイン等の産生や放出を抑制するシコニン(生薬シコンの有効成分。Sykキナーゼ阻害作用を有する。)によるアルツハイマー病等の神経変性性疾患の予防と治療の可能性を明らかにするため、本年度は以下について検討した。 1)昨年度に引き続き、タウ変異Tgマウス(アルツハイマー病及びパーキンソン病モデル。SJLBマウス)におけるアルツハイマー病の発症の抑制効果(オープンフィールド試験)及びパーキンソン病の発症抑制効果(フットプリント試験)について解析した。その結果、高齢Tgマウスにシコニン(2.0mg/10mL/kg)を週2回経口投与した場合に、パーキンソン症状の改善傾向が認められた。 2)LPS投与アルツハイマー症モデル動物の作成過程で、LPSの脳室内投与では認知機能低下が起きず腹腔内投与により認知機能低下が起きることが明らかになり、全身性の炎症が認知機能低下の引き金となる可能性が考えられた。また、LPSの投与方法のみならずLPSの種類によりモデル動物の発症の程度が大きく異なることから、その他の炎症惹起物質(TLR2、4及び9アゴニスト)も用い、再現性のあるモデル動物の作成条件を検討することとした。 3)シコニンの抗炎症作用及び抗酸化作用に加え、創傷治癒作用(40nMシコニンの20分間処理)についてリアルタイムPCR法も用いて昨年度に引き続き検討した。その結果、シコニンは実験創傷の治癒を促進する過程で、創傷治癒に関わる遺伝子(細胞遊走、細胞増殖、抗炎症及びアポトーシス関連遺伝子)のmRNA発現を選択的に制御している可能性が示唆された。この結果はシコニンが優れた抗炎症作用と抗酸化作用を有し、さらに優れた創傷治癒差作用を有することを示したものである。このように、シコニンは酸化ストレスと炎症に起因する疾患の予防及び治療薬の有力な候補物質と考えられる。
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