2009 Fiscal Year Annual Research Report
EGFレセプターの構造特性にもとづくペプチド性阻害薬の設計・探索
Project/Area Number |
21590129
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齋藤 一樹 Kyoto Pharmaceutical University, 薬学部, 研究員 (10192585)
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Keywords | EGFレセプター / 二量化阻害 / 二量化アーム模倣ペプチド / 自己リン酸化阻害 / 環状ペプチド / レセプター創薬 |
Research Abstract |
上皮成長因子(EGF)のレセプターは、細胞の増殖・分化などに深く関わっている一方で、肺がんの細胞などに過剰に発現していることから、EGFレセプターの制御異常が、がん細胞の無秩序な増殖や転移を引き起こしているのではないかと考えられている。また、EGFレセプターは、EGFなどのリガンドが細胞外領域に結合すると細胞膜上で二量化し、その結果として、細胞内領域に存在するチロシンキナーゼが活性化されて自己リン酸化を起こすことが知られている。そこで、申請者は、過去に自ら世界に先駆けて明らかにしたEGFレセプター細胞外領域の二量体構造にもとづき、二量体中で互いに接し合うレセプターの界面に存在する特徴的な「二量化アーム」を模倣したペプチドを設計し、それらが競合的にEGFレセプターの活性化を阻害することができるかを検討した。EGFレセプターを高発現しているがん由来のA431細胞から調製した膜画分では、単に二量化アーム先端のアミノ酸配列を有する直鎖ペプチドはEGFレセプターの二量化阻害活性を示さなかったものの、それらの両端にシステイン残基を導入してジスルフィド結合で環化しアーム先端のループ構造を模倣した環状ペプチドには弱いながらも二量化阻害活性が見られた。また、A431細胞そのものを用いた実験では、この環状ペプチドが10μM程度の濃度でEGFレセプターの自己リン酸化を阻害することが明らかとなった。現在、このような構造ベースの論理的な薬剤設計と並行して、EGFレセプターなどの標的タンパク質に結合するペプチドをスクリーニングするための効率の良い手法の開発を手がけており、今後、これらのアプローチを統合して、EGFレセプターに対してより強力な二量化阻害薬の設計・探索を行ってゆく予定である。
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