2012 Fiscal Year Annual Research Report
リボザイムの機能解明と乳癌抑制作用を持つイミダゾールC-ヌクレオシドの合成
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21590130
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
春沢 信哉 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (90167601)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | リボザイム / 反応機構 / テトラゾール / マイクロウエーブ / 乳癌 / 抗癌剤 / 白金錯体 / H3アンタゴニスト |
Research Abstract |
我々は、ここ数年イミダゾールC-ヌクレオシドを基盤とするホスホロアミダイトの合成研究を発表し、それらを用いて、自己切断型リボザイムの反応機構を解明する研究を展開してきた。しかし、VSおよびヘアーピンリボザイムでは、二つの中心核酸塩基が、酸および塩基として機能するため、酸塩基触媒であるイミダゾールを用いる限り、どちらの核酸塩基が、酸としてあるいは塩基として働くのかまでは特定できなかった。我々は、さらにこの問題に取り組み、一般-酸として機能するテトラゾールに着目し、テトラゾールC-ヌクレオシドホスホロアミダイトからテトラゾール改変リボザイムを合成することで、直接一般酸として機能する核酸塩基を特定する手法の研究を行っている。また、これを達成するには、従来法では困難であった不活性なニトリルとNaN3から、直接テトラゾール環合成法の開発に対して、マイクロウエーブを用いる効率合成法を開発し、最近その成果を報告した。一方、乳癌の増殖抑制分子の合成研究は、これまでは、エストラジオールを基盤としたが、先のテトラゾールの新規合成法を応用することで新たにテトラゾール架橋二核白金錯体を合成し、その中にシスプラチンをしのぐ強い抗癌性分子のいくつかを見つける事が出来た。これらは、臨床上問題となっているシスプラチン耐性癌に対しても高いEC50値を示すため、前臨床試験にむけての準備を現在進めている。さらに、ヒスタミンH3受容体が、乳癌の増殖および抑制に関与するという報告から、我々が開発した強力なH3アンタゴニストOUP-186とそのアナログで乳癌の増殖抑制を調べたところ、特定の官能基を有する化合物群に強い乳癌抑制作用を発見した。このようなH3アンタゴニストから抗癌剤を開発しようとする試みは、他になく、これが最初の研究例となるべく鋭意研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
リボザイムの反応機構解明に必要である、テトラゾールCn-リボフラノースホスホロアミダイトの合成とテトラゾール改変VSリボザイムの合成研究は、昨年、Tetrahedron Lett.誌(2012)に速報を出した。また、不活性なニトリルからマイクロウエーブを用いるテトラゾール合成法の開発とテトラゾール架橋二核白金錯体の合成は、最近Synthesis誌(2013)に掲載された。また、マイクロウエーブを用いる合成反応についての自身の研究総説(大阪薬科大学紀要, 2013)と不安定なホスホロアミダイトの効率的マススペクトル測定法についての総説(薬学雑誌, 2013)を発表した。 乳癌の増殖抑制分子の合成研究の内、その基盤となる強力なH3受容体アンタゴニストに関する研究は、現在Bioorg&Med.Chem.Lett.誌に投稿のための原稿をまとめ上げ、投稿直前にあり、本年中の発表を目指す。また、テトラゾール架橋二核白金錯体の抗癌性に関する論文も順次発表していく。これらの論文発表に先駆けて薬学会年会での多数の発表、さらに、有力な内外の学会で発表してきた。それらは、8th AFMC International Medicinal Chemistry Symposium (Tokyo, 2011), 13th Tetrahedron Symposium(2012, Amsterdam),14th Tetrahedron Symposium(2013, Viena)、第38回反応と合成の進歩シンポジュウム(2012,東京)、第11回次世代を担う有機化学シンポジュウム(2013,東京)などである。本研究は、このように研究成果を上げるにとどまらず、本研究に携わる若手研究者の育成によくその成果を見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
リボザイムの反応機構解明は、これまで英国のDundee大学のLilley教授らと行ってきたが、今まで開発した数種の合成ユニット(ホスホロアミダイト)から自動合成で得ることのできる改変VSおよびヘアーピンリボザイムの切断および連結反応における触媒活性を調べるとともに、一般酸として機能する可能性を持つ機能性分子としてトリアゾールCn-リボフラノースホスホロアミダイトの合成を新たに検討する。 一方、ヒスタミンH3/4受容体関連研究の中では、すでに強力なヒトH3アンタゴニスト、OUP-186を発見している(現在論文作成中)。この化合物は、H4受容体には作用しないサブタイプ受容体選択性を示すだけでなく、ラットのH3受容体では全く作用しないという種特異性を示すユニークな化合物である。ヒトに適応する多くの医薬品開発では、ラットのようなげっ歯類に依存した薬理実験が行われている現状から、この分子のモデリング実験でヒトとラットのH3受容体の違いを解明することは、意義深いことであることは明らかである。分子モデリングは、大阪医科大学の山本大助准教授が担当し、すでにいくつかのアミノ酸の違いが重要であることを明らかとしている。 特に、ヒスタミンH3/4受容体リガンドから乳癌の増殖抑制分子への展開は、今まで創薬分野では誰もしていない、全く新しい研究領域であるため、特にこの分野の研究を集中的に行うことになる。薬理学的評価では、今まで共同で研究を行ってきた大阪薬科大学の高岡昌徳教授の研究グループが担当し、万全を図る。 さらに、テトラゾール架橋二核白金錯体の抗癌剤の研究は、鈴鹿医療大学の米田誠司博士との共同研究として一層強力に進める。
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Research Products
(18 results)