2009 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドロームの誘発におけるケトン体代謝調節の役割に関する研究
Project/Area Number |
21590137
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
福井 哲也 Hoshi University, 薬学部, 教授 (90111971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 正博 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80328921)
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Keywords | ケトン体 / 脂肪細胞 / アセトアセチルCoA合成酵素 / 肥満 / 脂肪酸 |
Research Abstract |
ケトン体代謝酵素であるアセトアセチルCoA合成酵素の発現に対する遊離脂肪酸の影響を、培養脂肪細胞(3T3-L1細胞)を用いて検討した。その結果、パルミチン酸及びリノール酸処理により、本酵素発現が有意に上昇した。一方、交感神経作動薬(lsoproterenol)処理により細胞内の脂肪酸分解を誘導したところ、逆に発現が低下した。これらの作用は、同じケトン体を基質とする代謝酵素であるCoA転移酵素では認められなかった。また、本酵素の基質であるケトン体はミトコンドリア内での脂質代謝の際に産生されることから、遊離脂肪酸の代謝により生じるケトン体は、CoA転移酵素ではなく本酵素によりその利用が調節されている可能性が示唆された。更に、肥満の成因の違いによる本酵素遺伝子への影響を脳中枢系において検討したところ、食欲抑制ホルモンであるLeptinの情報伝達不全による遺伝性肥満時に視床下部の弓状核で特異的な発現減少が認められた。この部位の神経細胞にはleptin受容体が発現していることから、初代培養系でleptinシグナルの影響を検討したところ、本酵素の発現がleptin濃度依存的に誘導された。この誘導作用は、先と同様CoA転移酵素では認められなかった。このことから、leptinは脳神経系において新たに本酵素を介したケトン体利用経路の調節因子でもあることが明らかとなった。CoA転移酵素はケトン体をエネルギー源として利用する際に鍵となる酵素であるのに対し、本酵素はケトン体を生体内物質の合成基質として利用する際に鍵となる酵素であると考えられている。従って、本年度得られた結果から、本酵素は様々な生体のエネルギー状態に鋭敏に応答し、ケトン体を生体内物質へと転換利用する新たな代謝経路に寄与する因子である可能性が示唆された。
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