2010 Fiscal Year Annual Research Report
メタボリックシンドロームの誘発におけるケトン体代謝調節の役割に関する研究
Project/Area Number |
21590137
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
福井 哲也 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90111971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 正博 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80328921)
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Keywords | ケトン体 / 脂肪細胞 / アセトアセチルCoA合成酵素 / 肥満 / AMPK / レプチン |
Research Abstract |
ケトン体代謝酵素であるアセトアセチルCoA合成酵素への肥満の成因の違いによる影響を検討したところ、食欲抑制ホルモンであるLeptin不全による遺伝性肥満時においてのみ、皮下部脂肪組織と筋肉組織、および視床下部の弓状核で特異的な発現減少が認められた。これは、Leptinそのものの機能不全をおこしているob/obマウスでも、受容体のシグナル伝達能の不全をもつZucker fattyラットおよびdb/dbマウスでも共通して認められた。弓状核の神経細胞にはleptin受容体が特異的に発現していることから、本酵素遺伝子の発現に対するLeptinの影響を、胎児脳初代培養細胞および神経細胞(N41細胞)を用いて検討した。その結果、本酵素発現はLeptinの濃度および処理時間に依存的に有意に上昇した。また、この発現誘導はAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化剤(AICAR)により減弱し、阻害剤(compound C)により活性化した。これらの作用は、同じケトン体を基質とする代謝酵素であるCoA転移酵素ではほとんど認められなかった。更に、末梢組織についても培養細胞系でeptinシグナルの影響を検討したところ、分化誘導後の脂肪細胞および筋細胞においてのみ本酵素の発現がleptinにより誘導された。更に、筋肉組織についてはAMPKシグナル経路により脳神経系とは逆の影響を受けることが明らかになった。このことから、Leptinシグナルは、CoA転移酵素を介したケトン体のエネルギー利用経路ではなく本酵素を介したケトン体の合成基質としての利用経路をAMPKシグナル系を介して活性化している可能性が示唆された。AMPKシグナルは脂質代謝などエネルギー代謝系に重要であることが報告されている。従って、本年度得られた結果から、本酵素は様々な生体のエネルギー状態に鋭敏に応答し、ケトン体を生体内物質へと転換利用する新たな代謝経路に寄与する因子である可能性が示唆された。
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