2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590141
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
天野 富美夫 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (90142132)
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Keywords | サルモネラ / 乾燥耐性 / Dps (Sep22) / ストレス応答 / 病原因子 |
Research Abstract |
本研究は、主要な食中毒原因菌であるサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella Enteritidis;以下、SEと略す)を用いて、サルモネラの乾燥耐性の測定法を確立し、乾燥耐性に関与する遺伝子及び環境因子を明らかにし、サルモネラの乾燥耐性獲得機構を解明すること、及び、環境中における乾燥耐性の獲得と病原性の獲得に相関性があるか否かを検討することを目的とする。さらに、環境中のSEの乾燥耐性発現に関連する食中毒の発生を予防するための方策を開拓することも目的とする。 本年度の主な成果を示す。(1)SEの乾燥耐性獲得におけるsep22遺伝子の関与の解析:昨年度備品として購入した遺伝子導入導入装置を用いて、sep22遺伝子欠損変異株にsep22遺伝子を導入して得た復帰変異株が、SEp22のmRNA及びタンパク質を発現し、乾燥耐性の獲得能も復帰することを明らかにした。(2)環境分離株におけるサルモネラの乾燥耐性とSEp22発現の関連に関する解析:環境分離株のうち、SEp22の低発現株を乾燥し、再び増殖させる過程を繰り返すと、SEp22の発現が数倍まで上昇し、乾燥耐性を増強することを見出した。この結果は、環境中において乾燥ストレスがサルモネラの病原因子SEp22を濃縮し、増強することを示唆する。(3)乾燥耐性獲得における栄養因子の役割:SEが乾燥耐性を獲得するために必要な栄養因子を解析した結果、M9最少培地に添加することが要求されたグルコースは、乾燥からの復帰直前に添加すれば、乾燥前に菌液に添加した場合とほぼ同様の効果が得られることを見出した。この結果から、グルコースの役割は、菌の内部で代謝されてエネルギーになるというよりはむしろ、浸透圧変化に対する保護作用を持つことによるのではないかと推察される。
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