2011 Fiscal Year Annual Research Report
人為的変異誘導によるインフルエンザウイルスの弱毒化とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
21590153
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
林 京子 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 講師 (60110623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松谷 裕二 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 教授 (50255858)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 弱毒化 / グリセロール誘導体 / NS1タンパク質 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスを、グリセロール誘導体である(1R,2R)-1-(5'-methylfur-37yl)propane-1,2,3-triol(MFPT)の存在下で増殖させると、病原性の低下した子孫ウイルスが得られた。本研究の目的は、MFPT処理による弱毒化の特性を明らかにして、将来的な弱毒生ワクチンの開発への手がかりをつかむことである。先ず、MFPT処理を10代繰り返して得られたウイルスクローンについて、in vitro及びin vivoでのウイルス学的挙動を検討した。その結果、細胞内での増殖も、動物体内での増殖も、元のウイルス株に比べて低下していることを確認できた。このような病原性低下に遺伝子レベルでの変異が寄与しているかどうかを明らかにするために、全ウイルス遺伝子の塩基配列を解析した。その結果として、宿主細胞へのウイルスの結合や子孫ウイルスの放出に重要な役割を果たす2種類の糖タンパク質(ヘムアグルチニンおよびノイラミニダーゼ)には変異が認められず、M proteinも保存されていることがわかった。一方、NP、PB1、PB2については、一部のクローンで変異がみられたが、このうちでウイルス増殖に関与する可能性があるのはPB2のK627Qのみであった。注目すべき点は、NS protein 1(NS1)の遺伝子配列に、すべてのクローンに共通した変異が生じていて、しかもこれまでに報告されていないものであることが明らかになったことである。現在、これらの変異とウイルス増殖機能との関連性を検討中である。さらに、昨年度までに合成したMFPTを用いて、マウス体内でのウイルス増殖に対する影響を検討し、MFPTがウイルス増殖抑制効果を及ぼすことが確認できた。これらの情報を統合して、インフルエンザ対策上の本化合物の有用性を解明することが残された課題である。
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Research Products
(1 results)