2011 Fiscal Year Annual Research Report
サイクリン依存性キナーゼによる肝薬物代謝酵素活性制御機構の解明
Project/Area Number |
21590170
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三輪 匡男 静岡県立大学, 薬学部, 名誉教授 (10046287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 純子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (30098131)
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Keywords | サイクリン依存性キナーゼ / 肝薬物代謝酵素 / 発現制御 / 核内受容体 / シグナル伝達 / 転写調節 / CDK 2 / 細胞周期 |
Research Abstract |
HGF添加培養液では肝がん細胞HepG2の細胞増殖が抑制され、UGT1A1、CYP2B6等の薬物代謝酵素の発現が亢進することを明らかにしている。HGFがCDK阻害因子pl6、p21、p27の発現を亢進させるとともに、UGT1A1の発現がサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤roscovitine添加により顕著に増大することから、細胞周期調節因子、特に、CDKに着目して薬物代謝酵素の発現制御機構を解析した。CDK1、CDK5をノックダウンしてもUGT1A1発現レベルに有意な変動は認められなかったが、CDK2をノックダウンするとUGT1A1、CYP2B6、CYP3A4の発現が亢進することから、CDK2がこれら酵素の発現を負に制御していることが示された。UGT1A1やCYP2B6の遺伝子発現にCARが転写調節の中心的役割を演じているが、roscovitineを作用させてもCARの核内レベルに有意な影響は認められなかった。RoscovitineによりPXRの核内レベルが増大したことから、PXRに焦点を当て、UGT1A1発現調節機序を解析した。PXRプラスミドDNAをトランスフェクトし過剰発現させた細胞(PXRリガンドrifampicin無添加)に、roscovitineを作用させるとUGT1A1レポーター活性が亢進するが、rifampicinとともにroscovitineを作用させた場合、相加、相乗効果は認められず、roscovitineによりリガンド非依存性に転写が亢進することが示された。変異を導入したPXRを用いてUGT1A1遺伝子発現に及ぼすroscovitineのリガンド非依存性のPXR活性化作用を解析したところ、T350APXRによりUGT1A1 mRNAの発現が亢進し、S350DPXRによるUGT1A1の発現抑制が示された。S350DはRXRとの結合能が低下していたが、コアクチベーターSRC2過剰発現により活性が回復したことから、S350のリン酸化はRXRやコアクチベーターとの結合能が低下させ、活性が消失したと推察された。野生型PXRはCDK2によりリン酸化されたが、S350DPXRのCDK2によるリン酸化が抑制されたことから、roscovitineはPXRの350番目セリンのリン酸化に関わるCDK2の作用を抑制することによりUGT1A1遺伝子転写を亢進させること、言い換えると、CDK2によるPXRの350番目セリンのリン酸化が核内での転写調飾抑制に働き、負の制御に関わっていることを明らかにした。
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