2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590172
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
小野 孝彦 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 客員教授 (60243028)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧野 利明 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 准教授 (80326561)
|
Keywords | 慢性腎臓病(CKD) / 七物降下湯 / Asymmetric dimethylarginine / 釣藤鈎 / 漢方薬 |
Research Abstract |
現在のわが国における透析患者数は約25万人、透析医療にかかわる医療費は約1兆1千億円と言われており、腎不全の進行を阻止するための治療法の開発が切実に望まれている。本研究ではそのような腎保護作用をもつ薬物を漢方薬に求め、ラットに6分の5腎摘を行うことにより、慢性的腎機能障害を惹起し、糸球体硬化の進行する系を開発し、その機構を解析するとともに、全身的な血管障害の機序を明らかにするための研究を行った。ラットに6分の5腎摘手術を行い、七物降下湯を連続経口投与しながら飼育した。血圧、血中クレアチニン値、血中尿素窒素値を定期的に測定し、16週後に腎組織を採取しホルマリン固定ののち、HE染色、PAS染色、マッソントリクローム染色をおこない、糸球体面積、糸球体内総細胞数、基質領域の測定・評価を行った。ヒト常用量と比べて5倍量、10倍量の七物降下湯は、腎不全ラットにおける血圧の上昇、血清中のNO濃度の低下とasymmetric dimethylarginine(ADMA)の増加、腎組織中のDimethylarginine dimethylaminohydrolase(DDAH)II発現量の低下を、それぞれ有意に改善した。しかし、血中クレアチニン値、血中尿素窒素値、尿中タンパク排泄量、腎組織切片における組織学的な評価においては、顕著な改善作用は認められなかった。このことから、七物降下湯は腎臓におけるDDAH II/ADMA/NO代謝経路を促進することにより、腎血管を弛緩させ、降圧作用を示すものと考えられた。次年度は本年度の結果を踏まえ、評価対象を血管病変まで広げ、七物降下湯の降圧作用メカニズムを明らかにしていきたい。
|