2011 Fiscal Year Annual Research Report
血液-組織関門を形成する細胞群のヒト細胞株の樹立と低用量抗がん薬の作用機序解明
Project/Area Number |
21590175
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中島 恵美 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (90115254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (40453518)
巨勢 典子 慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (60348612)
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Keywords | 血管内皮前駆細胞 / 壁細胞 / bFGF / SMA / ケモタキシス / 管腔形成能 / 血管新生阻害 / 抗がん薬 |
Research Abstract |
血液-組織関門を形成する細胞群には組織特異的な関門細胞と血管内皮細胞の相互作用がある。これまでの申請者らの研究で、骨髄由来血管内皮前駆細胞、TR-BME、が内皮のみならず血管を構成する壁細胞にも分化することが明らかとなった。さらに血管内皮前駆細胞はbFGF刺激を受け、増殖を継続しながら新生血管腔を形成し、bFGF刺激が消失することでSMAを発現する壁細胞へと分化する過程が示唆された。興味深いことに低用量の抗がん剤は血管内皮前駆細胞のケモタキシスを強く抑制した。これらの知見は血管新生阻害によるがん治療法開発を目指した抗がん薬の作用点として重要である。また、血管新生は血液-組織関門である胎盤においても重要であり、胎児由来の胎盤に対して新生母体血管が侵入することで効率的な物質交換の場としての胎盤関門能を形成する。血液-胎盤関門の本体は合胞体栄養芽細胞である。我々が樹立した合胞体栄養芽細胞株、TR-TBT、を抗がん剤ミトキサントロンで処理したところ、排出輸送担体ABCG2が誘導されることを発見した。これを糸口として、血液-胎盤関門の構築と変動要因を検討したところ、転写因子ERが特異的に誘導されていることが分かった。また、ヒト白血病細胞ではER発現が誘導されなかった。本知見は胎盤において、毒性薬物を胎児から母体へ排出するABCG2が組織特異的に発現誘導されることを示すものである。血液-組織関門における輸送担体を介した機能性関門の制御は、抗がん剤治療に重要な意味を持つ。以上により、新たな血管新生および組織-関門研究の基盤をつくることができた。
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