2010 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患における薬物療法と栄養療法の相補的作用機構解明と適切な薬物投与設計
Project/Area Number |
21590182
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
林 正弘 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (20012669)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 幹雄 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (60207610)
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Keywords | 炎症性腸疾患 / methylpredonisolone / P-glycoproein / 薬物療法 / 栄養療法 / 必須不飽和脂肪酸 / Dextran Sodium Sulfate |
Research Abstract |
Dextran Sodium Sulfate(DSS)誘導炎症性腸疾患(UC)モデルラットを作成し、薬物療法としてのmethylpredonisolone(MP)および栄養療法としての必須不飽和脂肪酸の効果についてin vivoでの検討を行った。 UC群において、MPの空腸からの吸収がコントロール群に比して顕著に上昇した。よってUC群では、MPの全身移行による副作用発現の危惧が推察された。これに対して、栄養療法に用いたリノール酸およびリノレン酸の共存により、MPの空腸からの吸収は顕著に抑制された。よって、両必須不飽和脂肪酸はMPの空腸からの吸収を抑えることによって、副作用を回避できるものと位置づけられる。MPの腸管各部位管腔内の濃度を測定したところ、UC群において、空腸および回腸管腔内のMPの濃度がコントロール群に比して顕著に高く、結腸での濃度をはるかに上回った。これに対して、両必須不飽和脂肪酸の共存により、空腸および回腸のMPの濃度は低下し、その分病変部位である結腸への送達が誘導されたと思われる濃度を検出できた。P-glycoprotein(P-gp)機能について相対活性評価から検討したところ、UC群においてP-gpの相対活性の低下が空腸および回腸において見出された。これに対して、両必須不飽和脂肪酸の共存により、P-gpの相対活性はコントロールレベルに回復した。P-gpのタンパク発現レベルについて検討したところ、UC群においてP-gpタンパク発現レベルの低下が示された。これに対して両必須不飽和脂肪酸の共存によりP-gpタンパク発現レベルのコントロールレベルへの回復が見出された。 以上、炎症性腸疾患における薬物療法および栄養療法について検討した結果、薬物療法のみでは病変部位へのMPの送達を可能にすることは困難であり、栄養療法を併用することで、MPの薬物療法効率を高めることが示された。また、栄養療法はMPの全身移行を回避することで副作用の回避も可能にすることが推察できた。このような、栄養療法の有効性はリノール酸およびリノレン酸によるP-gpの機能およびタンパク発現レベルの修飾に基づいたものであることを明らかにできた。
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