| Research Abstract |
皮膚感覚装置のグリア細胞は,複数の薄板突起を異なる軸索終末にのばした特異な形態を示す。私はこれまでに,毛の動き受容器槍型終末の分離標本を用いた実験で,神経伝達物質ATPの刺激に対するこの細胞の応答が,常に各薄板突起固有の信号生成焦点から突起全長に速やかに広がる,局所的Ca^<2+>濃度上昇に始まることを明らかにし,感覚装置のグリア薄板を,自身のCa^<2+>信号に基づいて伴行軸索に効果を及ぼす,機能区域と特徴づけた。ところで,この末梢グリアは,コレステロールとCa^<2+>信号系分子群に富む膜の小陥凹,カベオラを多数示すことが,以前から知られる。今回は,Ca^<2+>信号のグリア薄板内区域化とカベオラの関連を明らかにすることを目的とし,ラット洞毛槍型終末グリア細胞におけるカベオラの分布を,通常の電顕観察とカベオラ蛋白caveolin-1免疫組織化学によって,また,膜のコレステロール除去剤methyl-ss-cyclodextrinでカベオラを除去したときのATP誘発性信号の変化を,Ca^<2+>感受性蛍光色素fluo-4を用いた高速共焦点顕微鏡画像の解析によって調べた.電顕でみたグリア細胞の薄板突起上には,多数のカベオラが約20nmの間隔で密に並ぶのに対し,それ以外の細胞部位には単独または小集団のカベオラが散在するだけだった。これに一致して,caveolin免疫染色で,グリア薄板に限局する強い陽性反応が検出された。グリア信号のCa^<2+>画像解析では,methyl-ss-cyclodextrinでカベオラを消失させると,薄板固有の信号の生成遅延・伝播範囲の縮小と同時に,細胞全体に分布する異所性信号生成焦点の賦活化が起こり,区域化信号系が損なわれることが示された。これは,グリアのCa^<2+>信号系において,細胞局所に集積するカベオラが機能的に独立した細胞内小区域を構成することを示す,最初の報告である.
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