Research Abstract |
細胞膜の小陥凹,カベオラは,膜蛋白カベオリン1とコレステロールの足場にG蛋白共役型受容体と関連Ca^<2+>信号系分子を集める小器官として知られる。皮膚感覚装置のグリア細胞は,カベオラに富む薄板突起を多数のばして異なる軸索終末を包む点を特徴とし,カベオラ膜には,足場蛋白力ベオリンの強い免疫組織化学的活性が証明される。私はこれまでに,毛の動き受容器,槍型終末の分離標本を用いた生理実験で,この末梢性グリア細胞が神経伝達物質ATPのG蛋白共役型受容体P2Y_2を発現していること,各軸索終末を覆うグリア薄板が,局所ATP刺激に対し独自のCa^<2+>信号を生成し得る,細胞内機能区域と見なされること,膜のコレステロール除去剤methyl-β-cyclo-dextrinでカベオラを壌すと,薄板固有の信号の生成遅延・伝播範囲縮小を招き,この区域化信号系が損なわれることを明らかにした。今回は,ラット頬ひげ毛包からコラゲナーゼで分離した槍型終末を用い,グリア応答の責任受容体P2Y_2とその関連G蛋白であるG_<q11>の細胞内分布,それらとカベオリン1との共存を,蛍光抗体法間接法による免疫染色で調べた。正常培養液で維持した後にホルマリン固定した槍型終末グリア細胞では,P2Y_2とG_<q11>の強い免疫反応が,カベオリン1と同様に,薄板突起に限局して検出された。一方,methyl-β-cyclodextrinでカベオラを除去してから固定したグリア細胞では,上記3種の蛋白いずれの免疫染色も弱まり,細胞全体に均一に広がっていた。これらの観察結果から,皮膚感覚装置グリア細胞では,P2Y_2とG_<q11>のカベオラ依存的な集積が,ATP誘発性信号の軸索周囲突起への局在化に欠かせないと考えられる。
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