2010 Fiscal Year Annual Research Report
Hes1およびFRS2αによる間葉性神経堤細胞の細胞分化制御機構の解析
Project/Area Number |
21590221
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
亀田 芙子 北里大学, 医学部, 名誉教授 (10032898)
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Keywords | Hes-/-マウス / 細胞分化 / 神経管形成不全 / 中脳ドーパミンニューロン / tyrosine hydroxylase / Pitx3 / セロトニン / isthmic organizer |
Research Abstract |
Notch-Hesシグナルは細胞分化を抑制して幹細胞の維持に関与している。Hes1-/-マウスでは神経幹細胞が維持されず、正常より早くニューロンに分化するため、脳の形態形成に異常が生じる。すなわち神経管は形成されず、中脳は基板のみからなり翼板は欠損し、細胞増殖が起こる脳室上皮は脳表面に露出している。終脳および間脳腹側部の形成不全も生じる。さらに神経組織のみならず頭頚部に分布する間葉性神経堤細胞の分化が阻害されるため、神経堤細胞で形成される脳髄膜と頭蓋冠が欠損し脳は露出しており、脳脱出症が生じる。野生型マウスでHes1は胎生初期に2つのシグナルセンター、中脳・後脳境界部(峡)と基板底部、に発現する。中脳ドーパミン(mesDA)ニューロンはこれらシグナルセンターに接して中脳腹側底正中に形成され、発生が進むとその神経線維は線条体へと投射する。今回の研究でHes1-/-マウスにおけるmesDAニューロンの形成・分化・発達を2つのmesDAニューロン・マーカー-tyrosine hydraxylase(TH)とPitx3-を用いて野生型と比較して解析した(Kameda,投稿中)。著しい脳の形成不全を呈するにもかかわらず、Hes1-/-マウスでmesDAニューロンは野生型と同様に胎生(E)11.5日でTHの反応を示し、形成・分化は正常に起こることが分かった。E12.5日では細胞分化が早まるため、野生型より多数のTH-およびPitx3-陽性ニューロンが中脳に観察された。しかしE13.5日からmesDAニューロンは減少し、特に神経線維の減少が著しかった。野生型ではE14.5日からTH陽性線維は前方に伸びE15.5日で線条体に達するが、Hes1-/-マウスでは神経線維の著しい減少の他に、その走行と分布が野生型のそれらから大きく逸脱していた。さらに多数のTH陽性線維が後脳に侵入し、また野生型では後脳のみに局在するセロトニン(5-HT)ニューロンが中脳にも局在するなど、ニューロンの異所性発現が観察された。峡に発現するHes1がisthmic organizerとしてmesDA-や5-HT-ニューロンの局在と分布を制御すると考えられる。
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