2009 Fiscal Year Annual Research Report
イオンチャネル活性制御などの分子生理学的問題の全原子シミュレーション計算解析
Project/Area Number |
21590241
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
西澤 和久 Teikyo University, 医療技術学部, 教授 (00260935)
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Keywords | 計算化学 / 分子シミュレーション / 脂質膜 / イオンチャネル / カリウムチャネル |
Research Abstract |
今回の研究ではKv1.2-2.1キメラチャネルについて、電位センサS4の位置を低く保った場合にそれがどのように,イオンチャンネルのゲートであるS6の動きに影響するかを解析した。野生型アミノ酸配列を持つチャネルではS6の有意な動きは見られなかったものの、閉じた状態を安定化することが知られているE395Wの導入により、S6の閉状態への移行が観察された。このことは、Kvチャネルの開閉が分子動力学シミュレーションにより解析できることを示す。S4とS6の動きは、同じサブユニットに属するS4-S5リンカーと,S6間の直接の相互作用によるところが大きいが、隣り合うサブユニット同士の相互作用はそれほど強くないという結果が得られた。もう一つのテーマである細胞膜融合について、インフルエンザウイルスHAの膜融合ペプチドの脂質膜への影響を調べた。この膜融合ペプチドは脂質二重層膜に凸型のカーブを生じる性質があるとともに、互いに接近させた2枚の二重層膜の間に配置することにより、脂質-水境界の構造不安定にしstalk構造を形成しやすくなることが分かった。stalk構造は、膜融合モデルで提唱されているものであり、ウイルス膜と細胞膜の融合やシナプス小胞と細胞膜との融合の初期に見られる重要な構造である。さらなる解析により、実験で示されていたように、細胞膜平面との角度が小さくなるような変異ペプチドでは有意な融合活性を示さない。さらに、ランダムに配置した脂質分子、水分子を再構成する系において、融合ペプチドが膜貫通型の配置を取りやすいことがわかり、このことから融合ペプチドは、脂質-水界面だけではなく多様な位置関係を取りうることが示唆された。これらのことから、シミュレーションによる融合ペプチドの解析の潜在的有用性が示された。
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Research Products
(3 results)