2011 Fiscal Year Annual Research Report
T型Caチャネル遺伝子methylationによる機能修飾とがん細胞における役割
Project/Area Number |
21590247
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
大久保 つや子 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (40099065)
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Keywords | T型カルシウムチャネル / Cav3.1(CACNA1G) / アポトーシス / 癌抑制遺伝子 / p53 |
Research Abstract |
本研究では、T型Caチャネルの癌の増殖、細胞周期、アポトーシスなどにおける病態生理学的機能を明らかにすることを目的とした。前年度までに、T型チャネルサブタイプの1つであるCav3.1チャネルによる細胞内Ca2+流入を介してアポトーシス促進に働く系が働き、MCF-7乳癌ヒト由来細胞の増殖抑制に働く機序を示唆する結果を得た。本年度は、これらを更に検証し、その機序を検討した。Cav3.1チャネルのN端に赤色蛍光タンパクを付加したCav3.1を強制発現すると、膜発現している細胞においては例外なく強い核の凝集や崩壊が起きていた。一方、空vectorにより細胞質の赤色蛍光が発現する細胞にはそのような特徴は見られなかった。脱メチル化薬によっても、Cav3.1チャネル発現は増加し、MCF-7細胞においてはメチル化によるCav3.1発現抑制が起きている可能性があると考えられた。シクロホスファミドは、MCF-7細胞においてアポトーシスを誘導すると同時にCav3.1チャネル発現を増加させたが、シクロホスファミドがp53経路を介してアポトーシスに至ることが報告されていることから、次に、p53経路との関連を調べた。p53安定化剤CP-31398はアポトーシス誘導剤としても使用され、これによりアポトーシス細胞を増加させるが、これと一致して、Cav3.1チャネル発現を増加させた。また、CP-31398誘導アポトーシスはCav3.1のsiRNAによって抑制された。データベース検索によると、Cav3.1遺伝子上流には、p53結合部位が存在するので、Cav3.1チャネル発現にはp53が関与する可能性がある。Cav3.1遺伝子ノックダウンによって変動する遺伝子群のマイクロアレイによる解析を行うと、p53安定化に働くE3ユビキチンリガーゼsiah1の発現低下が起きており、また、Cav3.1を膜発現している細胞においては一致してsiah1発現増加が起きていた。以上の結果から、Cav3.1はp53による発現調節を受けると共にp53安定化に寄与し、アポトーシス促進に働くことが示唆され、またMCF-7細胞ではメチル化による発現停止が起きていることなど、Cav3.1が癌抑制遺伝子として働く可能性を裏付ける結果であった。Cav3.1の発現増加を誘導する薬物の開拓は癌治療の新たな可能件につながると考えられる.
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