2011 Fiscal Year Annual Research Report
概日リズムの同調に関わる網膜神経節細胞の光受容メカニズム
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21590262
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
高雄 元晴 東海大学, 情報理工学部, 教授 (90408013)
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Keywords | 視細胞 / 生理学 / 概日リズム / メラノプシン / 光感受性網膜神経節細胞 |
Research Abstract |
マウス網膜の錐体視細胞は二色性であることから、色覚の神経科学的基盤を研究する上で、非常に有用な実験動物である。本年度は、マウスを用いて、電気生理学および免疫組織化学的手法により、光感受性網膜神経節細胞における分光感度特性について詳細な解析を中心に行った。その結果、同細胞は、最大分光感度であることがわかっている狭帯域単波長の光刺激よりむしろ、低い分光感度特性しか有さない狭帯域多波長混色光の光刺激のほうが、より強い光反応を惹起可能なことがわかった。また、このような混色光による増強効果は、光感受性網膜神経節細胞の光受容特性のみならず、同細胞に錐体双極細胞を介してシナプス入力する錐体視細胞による光受容が関わっていることが示唆された。また、概日リズムの光同調に関わり、かつ光感受性網膜神経節細胞が主として直接投射する脳の神経核である視交叉上核におけるニューロンの活動を、転写因子c-Fosの発現を指標にして調べたところ、同様に混色光による光反応性の増強効果が見られた。 これらの結果から次のように考えられる。1)概日リズムの光同調において、光感受性網膜神経節細胞による光受容のみならず、同細胞と錐体視細胞による光受容との相互作用に着目することにより、概日リズムの光同調メカニズムの詳細な理解につながる。2)ヒトにおいて、概日リズムの光同調において、混色光に対する感受性を詳細に明らかにすることは、季節性うつ病、睡眠相遅延症候群といった概日リズム障害の光治療の指針を策定するにあたって、新しい視点になると期待される。
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