2011 Fiscal Year Annual Research Report
終板器官周囲のプロスタグランジンE2発熱機構を制御する神経伝達物質
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21590265
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Research Institution | National Institute of Health and Nutrition |
Principal Investigator |
大坂 寿雅 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 健康増進研究部, 上級研究員 (30152101)
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Keywords | 発熱 / 低酸素環境 / 視床下部 / グルタミン酸 / GABA / 酸素消費率 / 外側視索前野 |
Research Abstract |
これまでに、視床下部視索前野の吻側端に存在する終板器官周囲部において、プロスタグランジンE2は熱産生を促進し、熱放散を抑制することが発熱の神経機構として重要であることが分かっている。この部位にはノルアドレナリンや一酸化窒素も作用して低体温および解熱反応を誘起することを私は見いだし、昨年度はこれらの反応が低酸素環境下での低体温反応誘起に関わる可能性を示した。しかし、終板器官周囲部からどのような神経機構を介して最終的な熱産生や熱放散に至るのかについて十分な理解は得られていない。特に視索前野内での局所回路によって上記の諸反応が統合される可能性が指摘されているが、その詳細は不明である。そこで、本年度は外側視索前野が終板器官周囲部から下行性の情報の中継と統合に重要である可能性を検証した。実験にはウレタン・クロラロース麻酔ラットを用いて、三連ガラスピペットを用いてグルタミン酸およびGABAを視索前野内に局所投与して酸素消費率、心拍率、尾部皮膚温度、結腸温度に及ぼす影響を調べた。外側視索前野を中心とした広い領域にグルタミン酸を注入したところ熱放散の促進、熱産生の抑制、徐脈、低体温反応が起きた。内側視索前野に注入しても反応はなかった。グルタミン酸感受性部位の中心である、前交連下部にGABAを注入すると熱産生反応がおきた。GABA感受性部位はグルタミン酸感受性部位の中に含まれていた。近傍で、GABAの直接作用が内部分でも、GABAを前投与しておくとグルタミン酸による反応が大きく減弱した。熱放散には外側視索前野が広く関わり、熱産生にはその一部である前交連下部が重要であり、発熱や低酸素環境下での低体温に外側視索前野が関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内側視索前野ではなく外側視索前野が重要であるという結果は当分野の一般的な見解を修正する発見であった。グルタミン酸感受性領域が広く、その中にGABA感受性機構が有り、拮抗的に働いているという知見も新しく得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は低酸素環境下で誘起される低体温反応に、平成23年度に見いだした外側視索前野のグルタミン酸感受性機構が関わっている可能性を検証する。
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Research Products
(1 results)