2009 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性発癌におけるヒスタミンの役割および予防・治療への応用
Project/Area Number |
21590268
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
倉増 敦朗 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90302091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷内 一彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50192787)
助川 淳 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30187687)
櫻井 映子 いわき明星大学, 薬学部, 教授 (90153949)
渡邉 建彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 名誉教授 (70028356)
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Keywords | ヒスタミン / 炎症 / 発癌 / ヒスタミン受容体拮抗薬 |
Research Abstract |
多くの臓器において、癌は慢性炎症をベースに発症することが知られている。例えばヘリコバクターピロリによる慢性胃炎からの胃癌、ウイルス性肝炎による肝細胞癌、炎症性腸疾患からの大腸癌などである。一方で、生理活性物質であるヒスタミンは、炎症や癌の増悪因子であるという報告がある。本研究では、発癌性化学物質であるアゾキシメタンと大腸炎誘発物質であるデキストラン硫酸ナトリウムによる炎症性大腸がん発生モデルを用いて、ヒスタミン受容体拮抗薬の腫瘍発生・増殖に対する予防および治療効果を調べる。 まず予備実験として、飲水中に含ませるデキストラン硫酸ナトリウムの濃度を決定した。ICRマウス(オス、6週令、一群5匹)に、0%、1%、2%、3%、4%、5%のデキストラン硫酸ナトリウムを、5日間自由に飲水させ、便の性状および体重の変化を観察した。デキストラン硫酸ナトリウム濃度2%以上の群で、軟便、下痢、肛門からの出血が5日目以降に認められた。また、4%と5%の群で、5日目以降、最大で-15%の体重減少がみられた。次に、これらのマウスを2週間通常飲水で飼育した後、再びデキストラン硫酸ナトリウムを飲水させ、同様に便の性状の観察と体重測定を行った。2回目のデキストラン硫酸ナトリウム開始から7日後以降に、濃度3%以上の群で、過度の体重減少による死亡が認められた。以上の結果から、デキストラン硫酸ナトリウムの濃度が3%以上では、腫瘍が発生する前に、大腸炎が原因で死亡してしまうので、腫瘍発生モデルでは、濃度を2%以下にすることとした。 現在、アゾキシメタン(10mg/kg、デキストラン硫酸ナトリウム飲水開始5日前に腹腔内投与)を併用して、実際に腫瘍が発生するか実験を継続中である。
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