2011 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性発癌におけるヒスタミンの役割および予防・治療への応用
Project/Area Number |
21590268
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
倉増 敦朗 山口大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90302091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助川 淳 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30187687)
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Keywords | ヒスタミン / ヒスチジン脱炭酸酵素 / 炎症性発癌 / 骨髄由来抑制細胞 |
Research Abstract |
1.ヒスタミン生合成酵素欠損マウスを用いた炎症性大腸癌の検討 炎症性発癌におけるヒスタミンの役割を検討するため、アゾキシメタン(AOM)及びデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を用いた大腸癌モデルをヒスタミン合成酵素(ヒスチジン脱炭酸酵素)欠損マウス(Hdc-/-)及び野生型マウス(Balb/c)を用いて作製し比較検討した。遺伝子毒性を持つAOMを投与後、大腸炎誘発物質DSS(3%)を1週間自由飲水させ、その後2週間通常水を飲水させた。3% DSSと通常水のサイクルをあと2回繰り返し、マウスを安楽死させた。DSSによる大腸炎は、1回目のDSS投与時より2回目の方が、2回目より3回目の方が症状が重かったが、野生型マウスとHdc-/-マウスで症状の程度に有意な差はなかった。以上の結果から、ヒスタミンはDSS誘発大腸炎においては炎症メディエータとして機能していない可能性がある。 大腸に生じた腫瘍数は、野生型マウスで平均14.3個(標準誤差2.5、n=7)、Hdc-/-マウスで18.5個(標準誤差1.3、n=4)であり、Hdc-/-マウスでやや多い傾向が見られたが、有意な差ではなかった。1個の腫瘍の大きさ(面積)は、野生型マウスで平均28.0平方mm(標準誤差2.4、n=109)、Hdc-/-マウスで47.4平方mm(標準誤差5.5、n=56)であり、Hdc-/-マウスに生じた腫瘍の方が、有意に大きかった。以上の結果は、炎症性発癌において、ヒスタミンが腫瘍の発生に防御的に働くことを示唆する。 2.担癌状態における各種免疫細胞の比較 上記炎症性大腸癌モデルマウスより脾臓を摘出し各種免疫細胞の割合をフローサイトメトリーで比較検討した。樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、及びNKT細胞が、野生型マウスよりもHdc-/-マウスで有意に減少していた。逆に、骨髄由来抑制細胞が野生型マウスよりもHdc-/-マウスで有意に増加していた。以上の結果から、ヒスタミンが生合成されないと、何らかのメカニズムで腫瘍免疫が抑制され発癌が促進される可能性が考えられる。 これらの知見は、ヒスタミンやヒスタミン受容体アゴニストが炎症性発癌を抑制する予防薬や治療薬となる可能性を示唆している。
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