2010 Fiscal Year Annual Research Report
心筋細胞内アセチルコリン産生系のエネルギー代謝調節と病態への関与の可能性
Project/Area Number |
21590283
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
柿沼 由彦 高知大学, 教育研究部・医療学系, 准教授 (40233944)
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Keywords | アセチルコリン / ミトコンドリア / 酸素消費量 / 心臓 |
Research Abstract |
1.研究成果内容:心筋細胞内アセチルコリン合成系(cardiac non-neuronal cholinergic system)は心筋細胞内に従来の副交感神経系とは独立して存在し、その生理学的機能はミトコンドリア転写因子(TFAM)自身の転写を抑制し、結果として細胞エネルギー代謝を負に調節することを解明した。すなわち活性酸素・酸化ストレスの発生源であるミトコンドリアを常に抑制することがこの心筋細胞内アセチルコリン合成系の主要な役割と考えられる。なぜならばこの合成経路をsiRNAで抑制した細胞では、明らかに細胞酸素消費量がより増加したからである。この系は、ミトコンドリアが豊富な心筋細胞にとって、その異常機能亢進を起こさないようにするための分子ブレーキとしての役割をもつことが明らかとなった。また、この系を賦活化させる薬剤としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の中のdonepezilが候補として考えられ、eserineなどの一般的なエステラーゼ阻害薬と異なり、アセチルコリン合成経路を転写レベルで亢進させるという特異的な作用をもつことが明らかとなった。 2.現在、合成系促進効果をもつ他の薬剤を検討するとともに、薬剤を用いずに体内に本来備わっているストレス応答反応を逆に利用することで、このACh合成系を促進させると想定される理学的方法について検討している。方法自体は間違いなくこの合成系構成因子の発現を亢進させたが、この方法によって心臓内でのACh含量が実際に増加するか否かについて検討を加えている。今後これを用いて、疾患モデルに対して、ACh合成系を亢進させることで臓器保護作用を発揮するかどうかについて検討を加える予定である。
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Research Products
(10 results)