2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病合併症の原因となる微小血管機能異常の解明および医薬品の効力評価
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21590290
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
野部 浩司 昭和大学, 薬学部, 助教 (30276612)
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Keywords | 糖尿病 / 腎症 / インスリン / 末梢抵抗血管 / 血管平滑筋 |
Research Abstract |
本申請課題は、糖尿病患者のQOLを著しく低下させることが知られている合併症に関して、その発症原因が極めて微小な血管の機能異常であることを背景とし、従来では試みられていない微小血管や腎臓内部の血管における機能異常メカニズムを明らかにすると共に、既存あるいは新規の医薬品の効果を評価することである。これらの検討により慢性的高血糖条件下で引き起こされる合併症の発症を抑制すると共に、すでに発症している合併症の進行を妨げる治療方針が提供できると考えられる。 平成21年度および平成22年度の本課題研究において、微小血管の張力測定システムを構築した。さらに、正常マウスの典型的微小血管とされている腸間膜動脈のアゴニスト誘発の張力応答を比較することにより、一般的な検討で用いられてきた腸間膜動脈第一分枝(MA1)が大動脈と類似した薬物応答性を示し、MA1が分岐した第二分枝(MA2)が微小血管としての性質を色濃く示すことを見いだした。平成23年度においては、自然発症II型糖尿病モデルマウス(ob/ob mouse)が持続的な高血糖を示し、肥満を伴い脂質などの血液パラメーターも変化することを確認し、この条件下においてMA2収縮が著しく低下していることを見いだした。この収縮低下現象は、血管収縮のカルシウム感受性を制御するとされるrhoおよびrho kinaseを介する経路の異常が原因と成っていることが明らかと成った。特にrho kinaseの発現低下が直接的な原因と思われた。このような糖尿病病態下における血管収縮応答変化は、MA2のみで認められる現象であり、大動脈と類似した反応性をしめすMA1では全く認められなかった。 これらMA2に関する知見は、European Journal of Pharmacologyに採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画の過半数を占める、微小血管張力測定システムの構築と糖尿病モデルマウスにおける収縮応答変化の検出に成功している。最も困難が予想された微量な張力変化の検出をクリアしていることから、研究計画は順調に進んでいるものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までの本課題研究において、典型的微小血管標本とされる腸間膜動脈の応答性変化とその原因について明らかとしてきた。今後は、糖尿病性腎症の発症メカニズムについて、腎臓内部と外部の血管収縮応答について比較検討を行う予定である。既に腎臓内部と外部の血管応答性に差異が存在することが明らかとなっている。今後検討を行う糖尿病病態下において、腎臓内部の血管のみが収縮亢進を起こすと糸球体への血流量低下を引き起こし、腎機能全体へのダメージに繋がることが予想される。平成24年度においては、糖尿病下の腎臓内部、外部の血管収縮応答の差異を検出することから着手する予定である。
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Research Products
(1 results)