2009 Fiscal Year Annual Research Report
ATP・アデノシン系は生活習慣病モデル動物の拡張機能障害心に保護作用を示すか?
Project/Area Number |
21590296
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
篠塚 和正 Mukogawa Women's University, 薬学部, 教授 (50117777)
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Keywords | SHRSP.Z-Lepr^<fa> / IzmDmcrラット / ATP放出 / アデノシン放出 / ノルアドレナリン遊離 / 低酸素 / ニコランジル / 虚血プレコンディショナル / 拡張機能障害心 |
Research Abstract |
目的:本年度は「ATPやアデノシンなどのプリン物質の放出量が、拡張機能障害心においてどのように変化しているのか?」という点について、虚血心における交感神経由来ノルアドレナリン遊離との関連を考慮しながら、検討を行った。 結果: 心室筋におけるATP・ADO遊離:Wistarラットの心室筋標本からの自発的な総プリン物質放出量は、生理的緩衝液の通気ガスを酸素から窒素に交換することにより著明に増加した。酸素通気時と窒素通気時の緩衝液中の酸素濃度はそれぞれ、251.5±17.6mmHgと38.4±4.5mmHgであった。このような低酸素条件下における各プリン物質遊離量はアデノシン>ADP>AMP>ATPの順で多く、特にアデノシンとADPが有意に増加したがATPは逆にわずかではあるが有意に減少した。低酸素による同様の結果はSHRSP.Z-Lepr^<fa>/IzmDmcr(SHRSPZF)ラットにおいても得られたが、その量はWistarラットのそれよりも増加する傾向が観察された。このような増加は、Wistarラットの標本にニコランジルを処置した場合でも観察された。 心室筋におけるノルアドヒナリン遊離:Wistarラットの心室筋標本からの自発的なNA遊離量は、低酸素状態下において約100倍に有意に増加した。このような低酸素条件下におけるノルアドレナリン遊離量はアミンポンプ阻害薬のデシプラミンにより著しく抑制された。低酸素による同様の結果はSHRSPZFラットにおいても得られたが、その量はWistarラットのそれよりも有意に低かった。さらに、このような低酸素で惹起されるノルアドレナリン遊離量の低下は、Wistarラットの標本にニコランジルを処置した時にも観察された。 考察:本研究より、低酸素による交感神経由来ノルアドレナリンの非生理的大量遊離に対しニコランジルが抑制的影響を示すことが明らかにされたが、心臓の拡張機能障害を有していると考えられているSHRSPZFラットの心臓においても、このNA遊離の低下が観察された。一方、アデノシンの遊離は低酸素で増加し、この増加はNICOで増強される傾向が観察された。同様の増加傾向はSHRSPZラットでも観察された。さらにこのような結果は、ラットの尾動脈においても観察された。ニコランジルやアデノシンが虚血プレコンディショニングに重要であるという報告を考えあわせると、拡張機能障害を有する心臓においても、内因性のプレコンディショニング機構が機能している可能性が推察される。次年度は従来の計画にこの点も含めて検討を加える。
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