2009 Fiscal Year Annual Research Report
複合型アルツハイマー病動物モデルの認知障害におけるPPARγの役割に関する研究
Project/Area Number |
21590298
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩崎 克典 Fukuoka University, 薬学部, 教授 (10183196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 健一 神岡大学, 薬学部, 准教授 (00320309)
高崎 浩太郎 神岡大学, 薬学部, 助教 (70461506)
桂林 秀太郎 神岡大学, 薬学部, 助教 (50435145)
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Keywords | 脳循環障害 / アルツハマー病 / 動物モデル / 迷路学習 / PPARγ / 炎症性サイトカイン / HMGB1 / Telmisartan |
Research Abstract |
我々はこれまでに脳血管障害を併せ持つアルツハイマー病動物モデルおよびインスリン抵抗性糖尿病を発症したアルツハイマー病モデル動物を作成し、いずれも迷路学習障害などの記憶障害が増悪することを証明した。そこで本年度は、この現象が生じる機序に脳内の炎症反応が関わる可能性に着目し、神経細胞死の発現に関わる核内転写因子であるPPARγと脳内炎症性サイトカインであるHMGB1動態について検討した。その結果、(1)ラットに10分間の単回脳虚血を1時間間隔で2回行う繰り返し脳虚血を行うと処置7日後には8方向放射状迷路課題における空間記憶障害が発現すること、このとき海馬CA1領域には著明なアポトーシスが発現することを明らかにした。また、海馬内PPARγの発現はアポトーシスの発現に先立って上昇することを見いだした。さらに。空間記憶障害はPPARγのagonist作用を有するTelmisartanによって改善し、この改善作用はPPARγのantagonistであるGW9662の脳室内投与により拮抗されることも証明した。(2)中大脳動脈閉塞モデルマウスを用いて処置24時間後の脳内炎症性サイトカインの1つであるHMGB1の発現を見たところ有意な増加が見られた。この変化はTelmisartanの投与により有意に改善されGW9662により拮抗した。(3)10分間の単回脳虚血とβ-アミロイド脳室内連続投与によるラットの空間記憶障害の発現に及ぼすPPARγのagonistであるTelmisartanの効果を検討した結果、抑制傾向がみられ、これに関しては例数追加して確認中である。以上の結果から、脳循環障害による認知症の発現にはPPARγおよびHMGB1の一過性上昇とこれに引き続く海馬CA1領域のアポトーシスが深く関わり、このことが空間記憶障害を加速することが推測された。
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