2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合型アルツハイマー病動物モデルの認知障害におけるPPARγの役割に関する研究
Project/Area Number |
21590298
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩崎 克典 福岡大学, 薬学部, 教授 (10183196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 准教授 (00320309)
高崎 浩太郎 福岡大学, 薬学部, 助教 (70461506)
桂林 秀太郎 福岡大学, 薬学部, 助教 (50435145)
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Keywords | 脳循環障害 / アルツハイマー病 / 動物モデル / PPARγ / 炎症性サイトカイン / TNFα / HMGB1 / Telmisartan |
Research Abstract |
我々はこれまでに脳血管障害を併せ持つアルツハイマー病動物モデルを作成し、迷路学習障害などの記憶障害が増悪することを証明した。そこで本年度は、記憶障害に脳内の細胞死と炎症反応が関わる可能性に着目し、核内転写因子であるPPARγの神経細胞死に対する作用機序の解明や、炎症性サイトカインであるTNFαの動態について検討した。その結果、(1)10分間の単回脳虚血と凝集型β-アミロイドの脳室内連続投与を行うと処置7日後には空間記憶障害が発現すること、このとき海馬CA1領域には著明なアポトーシスが発現することを明らかにした。また、空間記憶障害はPPARγのagonist作用を有するTelmisartanによって改善し、この改善作用はPPARγのantagonistであるGW9662の脳室内投与により拮抗されることも証明した。さらにこのモデル動物では、海馬及び大脳皮質において処置後6時間後に顕著にTNF-αの発現が上昇すること、Telmisartan投与によって発現が抑制されることも明らかにした。(2)10分間の単回脳虚血と低重合型β-アミロイドの脳室内連続投与を行うと処置7日後には空間記憶障害が発現するが、このとき海馬CA1領域では著明なアポトーシスが認められないことを明らかにした。また、このモデルの空間記憶障害はTelmisartanによって改善しなかった。以上の結果から、脳循環障害による認知症の発現にはTNFαなど炎症性サイトカインの一過性上昇とこれに引き続く海馬CA1領域のアポトーシスが深く関わり、このことが空間記憶障害を加速することが推測された。さらに抗炎症作用と抗アポトーシス作用を持つPPARγをTelmisartanが活性化することにより空間記憶を改善することが証明された。本研究より、PPARγ agonist作用を持つ薬物が認知症治療薬となりうることが証明された。
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Research Products
(2 results)