2009 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内変性タンパク質の凝集体形成機構解明と凝集体形成阻害による新規心筋症治療法の開発
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21590299
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
三部 篤 National Research Institute for Child Health and Development, 薬剤治療研究部, 室長 (30425706)
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Keywords | HSPB5 / α-βクリスタリン / HDAC / バルプロ酸 / 不溶性凝集体 / 心筋症 / デスミン |
Research Abstract |
低分子ストレスプロテインB5(HSPB5;別名α-β-クリスタリン)の点変異(アルギニン→グリシン:R120G)はデスミン心筋症の原因であることが分かっている。この疾患は、細胞内にデスミンおよびHSPB5を含む不溶性凝集体を形成する特徴を持ち、HSPB5 R120Gタンパクを心臓で過剰発現しているトランスジェニック(TG)マウスでその病態が再現される。しかし、この疾患の有効な治療法は未だに存在しない。本研究では、心肥大や心不全の病態進行阻害に有効であるとされているヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬のデスミン心筋症への効果を検討した。【方法】In vivoデスミン心筋症モデルとして、心筋特異的にHSPB5 R120Gタンパク質を過剰発現しているTGマウスを用いた。また、in vitroモデルとして、新生児ラット心筋細胞に野生型HSPB5あるいはHSPB5 R120Gを含むアデノウイルスベクターを加え、それぞれのタンパク質を発現させ、その表現型を解析した。HDAC阻害薬は、in vivoモデルではバルプロ酸を、およびin vitroモデルではトリコスタチンAを用いた。【結果および考察】心臓特異的にHSPB5 R120Gを発現させることにより、マウスはデスミン心筋症を発症した。HSPB5 R120Gマウスにバルプロ酸を投与したところ、心筋重量の増大および心筋細胞内の不溶性凝集体量の増加を認めた。TGマウスと同様に、HSPB5 R120Gを発現している心筋細胞にトリコスタチンAを処置すると、細胞内の不溶性凝集体の増大および細胞生存率の低下が認められた。すなわち、デスミン心筋症病態は、バルプロ酸やトリコスタチンAなどのHDAC阻害によって悪化することが示唆された。この機序を検討するため、HDAC6の発現を選択的に低下させるsiRNAを心筋細胞に処置した。その結果、HDAC6の選択的ノックダウンにより、HSPB5 R120G誘発細胞内凝集体の増大と細胞生存率の低下が認められた。【結論】これらの知見は、デスミン心筋症病態にHDAC6が関わっていること、およびHDAC6を阻害することによりデスミン心筋症病態が悪化することを示唆する。
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