2010 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムへの挿入変異を利用した疾患関連遺伝子の単離とその機能解析
Project/Area Number |
21590303
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 金沢大学, がん研究所, 教授 (30262075)
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Keywords | がん遺伝子 / レトロウイルス / 挿入変異 / 疾患モデルマウス / がん分子標的 / ゲノム不安定性 |
Research Abstract |
がんの発症・悪性化の分子メカニズムを解明し、がんを克服するには、その原因となる遺伝子の効率的な同定と機能解析が重要となる。申請者は、レトロウイルス挿入変異を用いて、マウスに発症した血液腫瘍から、発がんに重要な共通挿入部位の遺伝子群を網羅的に同定してきた。これまでの大規模解析から、高頻度に単離される標的として、ヒストンのメチル化酵素17種と脱メチル化酵素11種を同定した。メチル化、アセチル化などヒストンの翻訳後修飾は、転写制御、DNA複製をはじめとする様々な生物学的現象に関与する。ヒトのがんでは、アセチル化酵素の変異や脱アセチル化酵素の発現異常が検出され、脱アセチル化酵素の阻害剤が既に抗がん剤として開発されているので、メチル化と発がんとの関係も大変注目されている。 本年度は、標的として同定したメチル化制御酵素群について、ヒトがん組織での発現を調べたところ、発現異常が高頻度に検出された。また、酵素を高発現する数種のがん細胞株では、酵素の発現をノックダウンすると、細胞増殖の抑制が観察され、ヒストンのメチル化の脱制御が、発がんに密接に関係することが確認された。さらに、酵素の発現異常が細胞内の遺伝子発現に与える影響を調べるために、がん遺伝子やがん抑制遺伝子候補の酵素の発現をON/OFFできる細胞株を樹立し、cDNAの大規模シークエンシングによる発現プロファイリングを行った。今回、ヒト食道がんなどで変異が見られるがん抑制遺伝子候補Utx脱メチル化酵素が、細胞の増殖を負に制御することを見いだし、その際、ヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)の脱メチル化を介して、RbおよびRb12がん抑制遺伝子の発現上昇を誘導することを明らかにした。このように、標的遺伝子の発現とともに、ヒストンの翻訳後修飾の変化を調べることで、がん細胞における遺伝情報発現異常の本質を理解していきたい。
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