2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムへの挿入変異を利用した疾患関連遺伝子の単離とその機能解析
Project/Area Number |
21590303
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30262075)
|
Keywords | がん遺伝子 / レトロウイルス / 挿入変異 / 疾患モデルマウス / がん分子標的 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
ゲノムに挿入変異を導入するレトロウイルスは、がんに関係する遺伝子を網羅的に同定し、その発症機構を解明するために有用なモバイル因子である。我々は、レトロウイルス感染マウスに発症した腫瘍から、ウイルスタギングを用いて新しいがん関連遺伝子群の探索を進めており、ヒストンおよびDNAのメチル化の制御に関与する酵素群をこれまでに同定した。こうしたエピジェネティクス制御の異常は、可逆的に元に戻すという治療戦略が想定されるため、次世代のがん治療の標的として注目される。現在、がんの発症・悪性化の様々なステップにおいてエピジェネティクス制御因子の果たす役割を解明することを目的として研究を進めている。 挿入変異の標的として同定したメチル化制御酵素群について、所属研究所のヒトがん組織バンクを利用してがん組織での発現を調べたところ、発現異常が高頻度に検出された。また、様々な乳がんおよび大腸がん細胞株における発現解析から、細胞の浸潤能や上皮系・間葉系の特徴に相関性を示す発現様式をもつ酵素を複数同定した。さらに、これらのメチル化制御酵素が、どのような標的遺伝子の発現を制御して、がんの発症・悪性化過程に関与しているかを大規模cDNAシークエンシングによるデジタル発現プロファイルやChIPアッセイを利用して解析を行った。その結果、乳がんや前立腺がんで高発現が見られるがん遺伝子PLU1脱メチル化酵素が、がんの発症だけでなく、がん細胞の細胞浸潤能を亢進する活性をもつことが明らかになり、がんの悪性化における新たな役割を見つけることができた。また、デジタル発現プロファイルを用いてPLu1酵素による転写制御の標的となるKAT5/Tip60ヒストンアセチル化酵素を同定した。さらにその下流の標的であるCD82/KAI1遺伝子も含めて、PLU1の制御する遺伝子発現カスケードが、がん細胞の浸潤に重要であることを明らかにした。
|
Research Products
(13 results)