2009 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素誘導因子により転写誘導される細胞接着分子遺伝子群の協同作用の生理的意義
Project/Area Number |
21590324
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 Aichi Cancer Center Research Institute, 分子病態学部, 部長 (80161389)
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Keywords | 低酸素 / 糖脂質 / セラミド / ジヒドロセラミド / DES1遺伝子 / 質量分析(ESI-MS / MS) / 長鎖脂肪酸(VLCFA) / 不飽和脂肪酸 |
Research Abstract |
我々は以前に、低酸素環境により細胞内の糖鎖合成遺伝子が数多く誘導され、これによって細胞表層の糖鎖が大きく変化することを明らかにした。細胞表層の糖鎖の一部は細胞接着に関与し、この変化によって細胞の接着能が変化することを解析して報告した。今回は糖鎖を担う糖脂質分子の脂質部分に変化が起こるかどうかを解析した。細胞を低酸素状態で大量に培養してリン脂質と糖脂質を抽出し、その脂質部分の分子種を高速液体クロマトグラフィーと質量分析(HPLC-ESI-MS/MS法)によって解析した。また、低酸素状態で培養した細胞からRNAを抽出し、脂質部分の代謝に関わる一連の遺伝子の発現変化をRT-PCR法によって解析した。その結果、低酸素により糖脂質のセラミド分子種が変わり、正常なセラミドが減少し(p<0.01)、その合成前駆体であるジヒドロセラミドが出現する(p<0.01)ことが明らかになった。正常状態ではジヒドロセラミドはDES1遺伝子産物の働きで正常なセラミドへとすみやかに合成される。この合成には酸素が必要であり、このため低酸素状態では合成が低下して前駆体であるジヒドロセラミドが蓄積すると考えられる。また、脂肪酸鎖部分においても、不飽和脂肪酸が減少して長鎖の飽和脂肪酸が有意に増加することが判明した。これは長鎖脂肪酸(VLCFA)中の不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸のモル比の著明な変化(p<0.01)として検出可能であった。不飽和脂肪酸鎖の合成にも酸素が必要とされることから、この変化は低酸素時の変化として妥当であると考えられた。こうした変化はいずれも糖脂質の疎水性を大きく増大させるものであり、これらの変化によって低酸素状態では細胞膜中での糖脂質の集合状態が変化し、糖鎖部分の変化と協同作用することによって、低酸素状態では細胞接着分子と糖脂質糖鎖との結合性が大きく変化すると考えられる。
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Research Products
(6 results)