2010 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素誘導因子により転写誘導される細胞接着分子遺伝子群の協同作用の生理的意義
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21590324
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
神奈木 玲児 愛知医科大学, 先端医学医療研究拠点, 客員教授 (80161389)
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Keywords | 低酸素 / CD44 / シアリルルイスX / ケモカイン / シンデカン / CCR7 / CXCR4 / ヘパラン硫酸 |
Research Abstract |
我々は以前に、低酸素環境により細胞内の糖鎖合成遺伝子が数多く誘導され、これによって細胞表層の糖鎖が大きく変化することを明らかにした。なかでも三種類の細胞接着系、すなわち、(1)セレクチンを介した細胞接着,(2)CD44を介した細胞接着,(3)フィブロネクチンを介した細胞接着、に大きな変動がもたらされる。今回は低酸素環境によりCD44を介した細胞接着に変化が起こるかどうかを解析した。細胞を低酸素状態で培養してフローサイトメトリーで解析したところ、CD44分子の細胞表層での発現には著変が見られなかった。また、CD44遺伝子の転写にも、各種バリアント型のCD44を含めて検索したが、大きな変化は検出されなかった。細胞膜標品を作成してウェスタンブロット解析を行ったところ、CD44分子の糖鎖発現に変化が認められた。抗糖鎖抗体を用いたウェスタンブロット解析によって、CD44分子が担う糖鎖の低酸素による変化をさらに解析した。また、これらの細胞接着分子は、ケモカインと共同作用を行うことが知られていることから、ケモカインリセプター発現に対する低酸素環境の影響についても解析した。とくにCCR7およびCXCR4について解析したところ、低酸素によってCXCR4遺伝子の転写が増大し、細胞表層での発現も増加することが判明した。他方、CCR7については大きな変化は観察されなかった。ケモカインの一部はシンデカン分子などが担うヘパラン硫酸をはじめとする細胞表層糖鎖に結合することが知られている。シンデカンファミリーのメンバーには低酸素で誘導される分子が存在するので、今後はより多種類のケモカインリセプターに検索を広げ、また細胞表層のケモカイン結合糖鎖の低酸素による変化の解析を合わせ行って、低酸素におけるこれら一連の分子の共同作用を総合的に解析する必要があると考えられた。
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