2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590341
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
岸田 昭世 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 教授 (50274064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 想子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 助教 (40274089)
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Keywords | Wnt / 脳腫瘍 / MMP-2 / 細胞運動 / 下垂体細腫瘍 / エナメル上皮腫 / 不死化 |
Research Abstract |
Wntは分子量約4万の細胞外分泌蛋白質であり、糖鎖付加や脂肪酸付加などの翻訳後修飾がその生理活性に必要であることが知られている。ヒトではWntは19種類のホモログからなるファミリーを形成しており、それぞれ異なった機能を担うと考えられている。たとえばノックアウトマウスの解析から、Wnt-3aは海馬や神経管の形成に、Wnt-4は腎臓形成に、Wnt-7aは小脳のシナプス形成に関わることが示唆されている。Wntのシグナルが細胞膜上の受容体Frizzled/LRP受容体複合体に結合するとそのシグナルは少なくとも3経路に分かれて、細胞内に伝達される。 すなわち、β-カテニン経路、PCP経路、Ca経路である。β-カテニン経路では受容体からのシグナルが細胞内のDvlを介して、GSK3を抑制し、β-カテニンの安定化、転写因子TCFによる遺伝子発現促進を行う。PCP経路は細胞骨格に作用し、細胞運動や細胞の極性を制御する。Ca経路は細胞内のカルシウムを動員し、PKCやカルモジュリン依存性蛋白質リン酸化酵素II(CAMK II)を活性化する。 本年度は、グリアから発生するヒトグリオーマ(神経膠腫)由来の細胞株におけるすべてのWntファミリーの発現を定量的にリアルタイムPCRで解析し、U251をはじめとするいくつかの細胞株で、ヒト正常脳組織に比べて、Wnt-5aやWnt-7b、Wnt-11、Wnt-9aの有意な発現の亢進を認めた。また、Wnt受容体Frizzled-2や-6、-7の有意な発現の亢進を認めた。さらに解析を進めた結果、グリオーマ細胞ではWnt-5a依存性の細胞運動、MMP-2の発現が腫瘍細胞の浸潤能と関わっていることを見出した。 現在、ヒトの歯原性腫瘍の一つであるエナメル上皮腫由来の細胞やヒト下垂体細腫瘍の不死化を試みているので、これらの細胞におけるWntの作用を解明する予定である。
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Research Products
(3 results)