2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄由来間葉系幹細胞とがん細胞の相互作用:幹細胞性獲得と浸潤・転移能に及ぼす影響
Project/Area Number |
21590370
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
仙波 秀峰 神戸大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (00302092)
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Keywords | がん幹細胞 / 骨髄由来間葉系幹細胞 / 胃癌 / 大腸癌 / Wnt5a / TGF-β / Snail |
Research Abstract |
骨髄由来間葉系幹細胞UE6E7T-12と胃癌細胞MKN-7との直接的接触が、(1)MKN-7細胞にWnt5a発現を亢進させ、(2)UE6E7T-12細胞にTGF-β発現を誘導することを明らかにした。そめ結果、MKN-7細胞はがん幹細胞性を回復させたが、その背景にSnail発現による上皮間葉系移行が存在することを明らかにした。胃癌においては、特に悪性度の高いスキルス型胃癌の進展に骨髄由来間葉系幹細胞と胃癌細胞との相互作用が重要であるという結果が得られたことは、がん幹細胞性再獲得のメカニズムのみならず、がん微小環境を理解する上で非常に有用な成果であったと考えられる。 さらにこの研究成果を発展させ、大腸癌腫瘍先進部でのがん細胞の悪性度亢進についても研究を行ったが、これもTGF-βによるSnail発現誘導と上皮間葉系移行によるがん幹細胞性再獲得と密接に関与することが明らかとなった。Snail発現ベクターを導入した大腸癌細胞株SW480のマウス皮下での造腫瘍能上昇や小さな腫瘍のcluster(tumor budding)形成にがん幹細胞性再獲得が重要であることも判明し、外科的に切除された大腸癌症例においても、術後リンパ節転移の有無と密接に関連していた。形態学的に認識されるtumor buddingの背景にあるメカニズムを解明することが出来、腫瘍先進部での細胞の"形態学的異常"を裏付けすることが出来たことは、tumor buddingの病理組織学的診断への応用を強く後押しするものとなった。 現在はこれらの研究成果を発展させ、新規がん幹細胞性マーカーの同定を検討中である。Snail発現誘導の有無による遺伝子発現変化の網羅的解析により、その候補分子(KIF3A・AHR)を同定することが出来た。事実、KIF3AとAHRをSW480細胞に導入するとがん細胞は上皮間葉系移行を示し、形態学的変化と遺伝子発現変化を示した。大腸癌症例での発現やこれらの分子を標的としたがん幹細胞治療への応用についても目下検討中である。
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Research Products
(3 results)