2011 Fiscal Year Annual Research Report
急性冠症候群の発症メカニズムにおけるMPOとS100A8/A9の分子病理学的研究
Project/Area Number |
21590378
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
上田 真喜子 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10137193)
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Keywords | バイオマーカー / 発症予知 / 急性冠症候群 / プラーク炎症 |
Research Abstract |
わが国では近年、高齢化社会の到来やライフスタイルの変化により、メタボリックシンドローム患者が急速に増加してきており、その結果、動脈硬化性疾患が著明に増加してきている。冠動脈硬化症の進展は、最終的に、急性心筋梗塞、不安定狭心症、虚血性心臓突然死などの急性冠症候群の発症をもたらすため、急性冠症候群の発症メカニズムの解明や、その予知・予防、および有効な薬物治療の開発はきわめて重要な課題である。 本研究は、冠動脈プラークの進展・不安定化メカニズムに寄与する複数の因子として、(1)好中球が産生するMPO、(2)リンパ球のインターフェロン-γにより活性化されたマクロファージが産生するネオプテリン、(3)活性化好中球/マクロファージから産生・放出されるS100A8/A9複合体、これらの相互連関について明らかにすることを目標にしている。本年度は、病理解剖から得られた冠動脈凍結材料や冠動脈アテレクトミー組織標本、外科手術例の大動脈弁組織標本、および血栓吸引療法により得られた凍結血栓標本などを用いて、病変部局所におけるこれら炎症/酸化ストレス関連因子の発現・局在レベルの変化を、主に免疫組織化学的手法を用いて検討を行なった。 結果として、(1)MPO陽性細胞の発現増加は、急性心筋梗塞患者から得られた不安定プラーク上の赤色血栓に顕著に認められること(Mizutani K et al AHA,2011;Yunoki K et al Eur. Heart L,in press,2012);(2)S100A8/9の発現増加は、安定狭心症例のステント後の心血管イベントに関与すること(Mizutani K et al, ACC,2012);(3)透行中の大動脈弁狭窄症例の大動脈弁では、MPOやネオプテリンの発現が著明に増加していること(Wada S et al Circulation Journal vol 76,Suppl 1,2012;Mizutani K et al Circulation Journal vol 76,Suppl 1,2012)などを明らかにした。以上の成果は、ヒト冠動脈の不安定プラークのみならず、大動脈弁狭窄患者の弁組織にもこれらのバイオマーカーが発現していることを示しており、今後もこれらのバイオマーカーの意義や相互連関についてさらに解析を進めたい。
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