2010 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍細胞間質細胞化生および癌間質性状評価による癌悪性度研究
Project/Area Number |
21590393
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
長谷部 孝裕 独立行政法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 室長 (00250209)
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Keywords | 乳癌 / 癌間質 / 上皮間質移行 / 癌悪性度 / 異型線維芽細胞 / リンパ管腫瘍塞栓 |
Research Abstract |
癌間質における癌遺伝子・遺伝子蛋白発現の重要性が近年の研究により明らかとなってきた。我々は以前より乳癌癌間質線維芽細胞の生物学的性状が浸潤性乳管癌の予後を規定する重要な因子であることを報告してきた。また、我わらは脈管内腫瘍塞栓、特にリンパ管腫瘍塞栓成分が重要な乳癌予後因子であることを報告してきた。本年度の研究により以下のことを明らかとした 1)浸潤性乳管癌の腫瘍間質線維芽細胞におけるp53癌抑制遺伝子蛋白発現は術前薬物療法を受けた群(319例)において、他の既知臨床病理学的因子および腫瘍細胞p53癌抑制遺伝子蛋白発現との多変量解析により、浸潤性乳管癌患者の癌再発・死亡に密接に係わる因子であることを明らかとした。Fibrotic focus (FF)は浸潤性乳管癌の特異的な癌間質形態であるが、FFを形成する線維芽細胞におけるp53癌抑制蛋白発現は、非FF形成線維芽細胞におけるp53蛋白発現に比べ密接に患者予後に相関していることも明らかとした。 2)リンパ管内に侵入したリンパ管腫瘍細胞よりなるリンパ管腫瘍塞栓異型度は、術前薬物療法の有無に関係なく、浸潤性乳管癌患者の極めて重要な組織学的予後因子であることを、既知臨床病理学的因子などとの多変量解析により明らかとした。 3)浸潤性乳管癌の腫瘍間質の主成分である腫瘍間質線維芽細胞の中で、奇怪な核異型を示す異型腫瘍間質線維芽細胞の存在を明らかとした。その存在は、浸潤性乳管癌患者の予後を推測する上で極めて重要であり、術前薬物療法を受けていない浸潤性乳管癌患者(1042例)、並びに術前薬物療法を受けた浸潤性乳管癌患者(319例)の腫瘍再発・腫瘍死と有意に相関することを他臨床病理学的因子との多変量解析にて明らかとした。 4)以前、我々はリンパ節に転移した腫瘍細胞の核分裂数(閾値:6個以上)が重要な病理組織学的予後因子となることを報告した。今回は、異なる母集団(術前薬物療法を受けていない浸潤性乳管癌患者、1042例)において、リンパ節転移腫瘍細胞の核分裂像が同様に予後因子となることを確証した。 上記1)、2)は総べて新しい知見であり、今後の乳癌治療の重要な資料となるものと考えられる。
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