2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト肺腺癌イニシエイティング細胞の同定と分子生物学的特徴の解析および治療への応用
Project/Area Number |
21590406
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
穴見 洋一 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40317376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 周二 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20286743)
野口 雅之 筑波大学, 医学系, 教授 (00198582)
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Keywords | 癌 / 発生・分化 / 病理学 / ゲノム / 遺伝子 |
Research Abstract |
本研究は肺腺癌の前癌病変である異型腺腫様過形成病変(AAH)や上皮内癌である細気管支肺胞上皮癌(BAC)の段階でtumor-initiating cellあるいは浸潤癌でのcancer stem cellにあたる細胞を同定し、その病理組織学的な特徴と分子生物学的特性明らかにすることを目的とするものである。そこでまずは、tumor-initiating cellあるいはcancer stem cellにおいて発現しているといわれる細胞表面マーカーが、AAHやBACの切除組織内あるいは肺腺癌の代表的培養株であるA549細胞においてどの程度発現しているかを確かめる必要があると考えた。2010年度には順天堂医院の過去の肺癌切除標本の中からBAC切除例30例、AAH切除例10例を選び出し、がん幹細胞関連のマーカーの中で組織免疫染色が可能な13抗体:AKR1C1, TM4SF1, NR0B1, CD133, CD24, CD34, CD44, CD326, MUC1, BCRP, Bm1, SP-A, TTF-1:の抗体を用いてBAC、AAHの組織標本およびA549のcell pelletについて組織免疫染色を行った。13抗体すべてについてBAC30例、AAH10例、A549 cell pelletを免疫染色した。TTF-1は多くのBACおよびAAHの腫瘍細胞で陽性所見を呈するが、腫瘍内で染色される領域に偏在性は見られなかった。AKR1C1, NR0B1, BCRPに陽性に染色されるがん細胞は各腫瘍内では非常に少なかったが、肺胞上皮置換性増殖部分の一部や、肺胞導から肺胞に移行する領域にある癌細胞で染色される症例がみられた。そのほかのマーカーについては腫瘍細胞で有意に染色されたがん細胞はほとんどなかった。A549培養細胞でもAKR1C1, NR0B1, BCRPは複数の腫瘍細胞で陽性所見が得られた。しかし、A549肺癌細胞は腺癌由来であるがTTF-1の染色性はかなり不良であった。このため切除標本はじめ固定方法や免疫染色の方法に多少の問題があった可能性が推察された。加えて、正常組織の中でも、終末細気管支から肺報道に移行する部分の細胞にもAKR1C1, NR0B1およびBCRPに染色性を示す細胞も散見されている。しかし、切除標本でもA549培養細胞でもAKR1C1, NR0B1およびBCRPに染色される(がん幹細胞様細胞の可能性がある)細胞の数はかなり少数であるため、当初計画していた切除組織から一次培養した細胞を用いてFACSによる細胞分取は難しい状況であると思われる。このため、組織培養法も含めがん幹細胞様細胞のFACS/sortに向けては改めて方法論から戦略を検討する必要がると考えている。
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