2011 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌におけるIGFBP-2の役割とバイオマーカーとしての評価
Project/Area Number |
21590410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
右田 敏郎 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (20462236)
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Keywords | IGFBP-2 / 肺癌 / バイオマーカー |
Research Abstract |
我々は肺腺癌の臨床サンプルを用いて、IGFBP-2が正常組織と比較して著明に発現が亢進していることをreal time PCR、免疫組織化学染色、western blotにて確認した。次に、150例の肺癌患者血清のIGFBP-2濃度をELISA法にて測定した。血清IGFBP-2濃度は患者によってばらつきを認めたが、平均値で比較すると健常者よりも有意に高値を示した。腫瘍マーカーとしての血清IGFBP-2の妥当性を検討するために、臨床病理学的因子との相関を解析した結果、血清IGFBP-2レベルは肺腺癌よりも肺小細胞癌において有意に高かった。また、血清IGFBP-2レベルはいかなる肺癌においても、病期が進行した患者で高値を示す傾向がみられた。肺癌の早期発見のバイオマーカーとしては検出感度の問題もあり、現段階では難しいと思われた。最後に、血清IGFBP-2レベルが予後予測因子となるかについて解析を行ったが、明らかな予後との相関は見られなかった。 (全体のまとめ) 肺癌症例において癌組織、血清中にIGFBP-2の有意な高発現を認めた。癌細胞の細胞質に発現するIGFBP-2はアポトーシス実行因子であるcaspase-3を抑制することにより、抗アポトーシス効果を発揮していた。ヒト肺癌細胞株にPI3K阻害剤を処理すると、増殖抑制に伴って細胞内および細胞外のIGFBP-2の発現は著明に抑制された。肺癌患者全体の血清IGFBP-2レベルは病期の進行とともに高くなる傾向がみられ、腺癌よりも小細胞癌おいて顕著であった。IGFBP-2のバイオマーカーの意義としては、in vitro実験において種々の治療による肺癌細胞の増殖抑制とIGFBP-2の培地中濃度の低下がよく相関することから、肺癌の治療効果を判定する際のモニタリングマーカーとして有用である可能性が示された。
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