2011 Fiscal Year Annual Research Report
ユニバーサル癌抗原Aurora-AキナーゼとFAKを標的とした免疫治療の開発
Project/Area Number |
21590424
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小林 博也 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90280867)
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Keywords | Aurora-A / FAK / ペプチド / ヘルパーT細胞 / HLA / 癌抗原 |
Research Abstract |
本研究においてこれまで、幅広い癌種に高発現している、Aurora kinase A(Aurora-A)とFocal adhesion kinase(FAK)の、個人間のHLA class II抗原アリルに制約を受けずに多数のHLA class II抗原分子(HLA-DR1,DR4,DR7,DR9,DR53)に提示される、promiscuousなTヘルパーエピトープペプチドを同定してきた。更に検討を重ね今回以下のことを明らかにした。 (1)メラノーマ切除材料パラフィン包埋切片を用いて、EAKの免疫組織染色を行った。3名の患者組織にFAKが高発現していた。 (2)この3名のメラノーマ患者末梢血から、単核球を分離しFAK143-157,FAK1000-1014ペプチドで刺激し、更に1週後に同ペプチドと自己の単核球で再刺激したところ、いずれも培養上清中にTh-1サイトカインであるIFNガンマとGM-CSFの産生が認められた。このことは、これらのエピトープペプチドに反応する前駆T細胞が患者末梢血中に存在することを示すものである。 (3)ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の一種であるtrichostatin A(TSA)を腫瘍細胞株に添加すると、Aurora-Aの腫瘍細胞内の発現レベルが優位に低下し、増殖能が抑制された。これらをAurora-A特異的CD4ヘルパーT細胞の標的細胞として共培養したところ、T細胞からの抗原特異的Th-1サイトカインの放出が抑制された。このことは、T細胞の反応が抗原特異的であることを証明するものであると考えられた。 (4)Aurora-Aペプチド特異的CD4ヘルパーT細胞は、Aurora-AとHLA class II分子を発現する腫瘍細胞を細胞数依存的に傷害した(CD4ヘルパーT細胞の傷害活性能の証明)。 (5)実際の患者末梢血中のAurora-Aペプチド反応性T細胞の頻度を、5名の尿路上皮癌患者で検討したところ、Aurora-A161-175とAurora-A233-247の2種類のペプチドに反応する前駆T細胞の分画を5名全ての患者で検出可能であった。 以上の結果から、Aurora-A,FAKはいずれもヒトの免疫系に認識される癌関連抗原分子であり、今回明らかにされたTヘルパーエピトープペプチドは有効な癌ペプチドワクチンの設計に寄与するものと考えられた。
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