2011 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄球系抑制細胞の産生機構とインターロイキン17の関与の解明
Project/Area Number |
21590443
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
稲葉 亨 京都府立医科大学, 医学研究科, 講師 (60203204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多 正和 京都府立医科大学, 医学研究科, 准教授 (60153087)
平位 秀世 京都大学, 医学研究科, 助教 (50315933)
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Keywords | 癌 / 骨髄球系抑制細胞 / 骨髄由来抑制細胞 / インターロイキン17 |
Research Abstract |
骨髄球由来抑制細胞(Myeloid Derived Suppressor Cells:MDSCs)は担癌状態で誘導される骨髄、脾臓、腫瘍中、末梢血中のCD11b+Gr-1+細胞であり、単球系の細胞と顆粒球系の細胞が混在した不均一な細胞集団である。MDSCはCD4およびCD8陽性T細胞の他、NK細胞の活性化を抑制することによって免疫システムの監視網を撹乱している(Marigo I.et al.Immunological Reviews 2008)。本研究は骨髄内での産生調節機構に注目し、a)造血幹細胞からの分化のメカニズムと、b)その誘導にかかわる可能性の高い液性因子としてインターロイキン17(IL-17)に注目してその関与を解明することを目的とした。腫瘍のモデルとしてはマウス悪性黒色腫の細胞株であるB16細胞をC57BL6マウスに接種するという系を用いた。細胞株摂取後21日目には脾臓でCDIlb+Gr.1+細胞が6%から14%へと増加し、mSCが誘導されていることが示された。この状況でマウスの造血幹細胞および骨髄球系の前駆細胞の頻度について検討した。Lin-c-kit+Sca-1+の造血幹細胞の頻度はMDSCの誘導に際して変化を認めなかった。骨髄球系細胞前駆細胞(lin-c-kit+Sca-1-CD16/32low CD34+)はlin-c-kit+細胞中22%から26%へと増加し、顆粒球マクロファージは前駆細胞(lin-c-kit+Sca-1-CD16/32high CD34+)はlin-c-kit+細胞中19%から14%と減少したが、いずれの変化も統計学的に有意ではなく、軽微なものであった。 IL-17が癌の病態においてどのような働きをしているかについてはまだ議論の余地のあるところである。本研究実施期間中にIL-17受容体からのシグナルがMDSCの誘導に重要であるという報告が学術誌に掲載された(He D et al.Journal of Immunology,2010)。Il-17受容体の主要なリガンドとしてはIL-17AとIL-17Fが知られているため、それぞれのノックアウトを用いてMDSCの誘導に関して野生型マウスとの間で比較検討した。B16細胞株接種により野生型マウスでは脾臓中のCD11b+Gr-1+細胞が1.9±0.56%から12.9±4.5%へと増加した。同じ条件でIL-17Aノックアウトマウスでは3.3±1.3%から9.7±5.4%、IL-17Fノックアウトマウスでは5.9±0.16%から14.1±9.17%への増加となり、三群間で統計学的に有意なさは認められなかった。このことはIL-17AとIL-17FはMDSCの誘導に関して機能的な重複を有していることを示唆していると考えられた。 以上よりMDSCの誘導において骨髄中の造血の変化は微細なものであること、IL-17重要なはMDSCの誘導において重要な役割を担い、主要なリガンドであるIL-17AとIL-17Fは機能的に重複していると考えられた。今後IL-17を標的としてMDSCの誘導を制御するという新たな治療の可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)