2011 Fiscal Year Annual Research Report
上皮間葉転換癌細胞の骨髄集積による全身性免疫抑制機構の解明
Project/Area Number |
21590445
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
工藤 千恵 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90424126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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Keywords | がん / 上皮間葉転換 / Snail / 骨転移 / 免疫抑制 |
Research Abstract |
癌の骨転移は、患者のQOLを著しく低下させて予後不良を招く要因の一つであるが、癌細胞が骨髄に転移すること自体を阻害できる有効な治療法は確立されていない。そこで、我々は、画期的な骨転移治療法を開発することを目的に、昨年までに、癌細胞はSnailを発現して免疫細胞ソースの豊富な骨髄へ優位に転移し、免疫抑制性の細胞群を効果的に増加させること、Snail下流で制御される特定分子を阻害することで全身性の免疫抑制も骨転移も解除できることを示してきた。 本年度は、まず、上皮間葉転換(EMT)が関与する癌幹細胞(CSC)に着目し、未だ明らかでない宿主免疫との相互関係を解析した。初めに、CSCには未だ統一されたマーカーがないことから、Snail強制発現細胞を材料にしてmicroarray解析を行い、その結果を活用して幹細胞性と相関する分子を同定した。その後、その分子を発現する細胞集団は、実は、これまでに明らかにしてきた免疫抑制をごく少数のみでも極めて強力に誘導できることが分かった。一方、EMT癌細胞が転移先で落ち着いた後の癌細胞、つまり、METに関しては、EMTと比べて研究は乏しい。そこで、骨転移全体を総合的に理解するため、自然転移した骨髄内の癌細胞をmicroarrayで解析し、悪性形質と関連する遺伝子を探索した。その結果、従来癌では全く報告されていない分子が、薬剤耐性を制御していることを見出した。同定したどちらの分子も、骨髄内で増殖する白血病細胞にも高発現しており、その発現をsiRNAなどで阻害することで、移植したマウス宿主内の抗腫瘍免疫を増強し、腫瘍の増殖や転移を阻害できることも明らかにした。 以上の結果から、骨転移はもちろんのこと、癌全般における難治性・悪性形質を構成する分子機序をより一層深く解明できた。今後も本研究を継続し、最終的には、これらの成果を臨床治療へ応用していく。
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Research Products
(8 results)