2009 Fiscal Year Annual Research Report
高病原性新型インフルエンザウイルス感染症の比較病理および感染モデル動物の開発
Project/Area Number |
21590449
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
阿部 賢治 National Institute of Infectious Diseases, 感染病理部, 主任研究官 (60130415)
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Keywords | インフルエンザ / H5N1 / 比較病理 / 分子疫学 / 国際研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アジア各国の協力を得て、ヒトおよび動物におけるH5N1ウイルスの感染病理学的特徴を比較検討した上で、その病態を明らかにすることである。本研究を展開するには、H5N1ウイルスの高エンデミック地域との共同研究が不可欠である。更には、本研究を通じてアジア各国との交流を図り、感染症および病理学的研究のためのネットワーク網を根付かせて問題意識を共有し、将来に向けた国際共同研究体制を構築・維持することも目標とする。今年度はタイ(チュラロンコン大学)、ベトナム(ホーチミン第一小児病院、ホーチミン医科薬科大学病院など)を訪問し、両国における最近のH5N1発生状況について調べた。昨年は、新型インフルエンザH1N1の世界的パンデミックがあり、タイ、ベトナムでもその対策が緊急課題となったことから、現地の担当者と議論をする十分な余裕がなかったが、今後の共同研究の進め方について討論した。タイでは2006年を最後にヒト、動物を含めたH5N1感染が発生しておらず、このため、タイでの新たな症例を集めることは困難であることが分かった。一方ベトナムでは、最近でもヒトで発生しており、2007年8例(5例死亡)、2008年6例(5例死亡)、2009年5例(5例死亡)であった。いづれも人体例であるが、剖検を行わない国なので、病理検体収集には困難が予想された。タイ・チュラロンコン大学の協力で、トラのH5N1感染による死亡例2例について、病理学的に観察することができた。本症例は、2003~2004年にかけてタイでH5N1が集団発生した時、H5N1に感染した生鶏肉を食べて感染したものである。感染トラは、高熱と呼吸障害をきたし、死亡している。剖検により、全身性臓器に重度の出血性病変が観察された。病理組織学的には、肺病変が主体で、肺胞上皮の脱落消失、細気管支の消失、肺胞壁の肥厚、肺胞内への好中球・マクロファージなどを含む炎症性浸出物の析出、フィブリン析出などが観察された。1例では、脳炎の病変も観察された。免疫染色にて、インフルエンザAウイルスの関連抗原が肺胞上皮、細気管支上皮、大脳神経細胞に局在を示した。以上、貴重な症例を病理学的に観察することができた。今後は、更に症例を増やして、ヒトとの共通点、相違点を比較病理学的、分子ウイルス学的に検討を加えたい。
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Research Products
(5 results)