2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒストン修飾蛋白のクロマチンリモデリングによるがんの発生及び進展機構の解明
Project/Area Number |
21590453
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
藤井 誠志 National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East, 臨床腫瘍病理部, 室長 (30314743)
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Keywords | 腫瘍 / ヒストン / クロマチン |
Research Abstract |
遺伝子を発現させるには、クロマチンを低凝縮状態にして転写因子が容易に結合し得る状態にする必要があり、それが主導的な因子であると考える。個々の遺伝子異常のみでは、正常細胞からがん細胞への劇的な表現型の変化を説明し得るには不十分であり、多数の遺伝子がまとめて選択的に不活化する機構が必要と考える。クロマチンのリモデリングを引き起こすヒストン修飾蛋白が、クロマチン構造を変化させて遺伝子発現メモリー機構の異常を引き起こすことによりがん細胞が生じると考えており、それを明らかにすることが本研究の目的である。今年度は様々な種類のがん細胞で高発現を示しているヒストン修飾蛋白である、EZH2の過剰発現がどのようなシグナル伝達で齎されるのかについて検討を行った。 EZH2の転写開始点から上流約3kbをクローニングし、種々の長さのdeletion constructを作製した。dual luciferase assayによりプロモーター活性の違いを検討した結果、MAP kinaseの下流のElk-1の結合部位を欠損させたconstructではlucifierase活性が著明に低下した。このシグナルを抑制する為、Elk-1 siRNAによるknockdown及びMEK inhibitorでがん細胞を処理すると、EZH2 mRNA及びproteinの低下が認められた。乳癌のサブタイプ別に検証すると、MAP kinaseのシグナルが活性化しているトリプルネガティブ乳癌亜型及びERBB2が過剰発現している乳癌亜型において、前述したメカニズムによるEZH2の高発現機構が確認された。MAP kinaseを介してヒストン修飾蛋白であるEZH2が過剰発現する機構の存在とこの機構が悪性度の高い乳癌の亜型に関係していることが見出された。
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