2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590463
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
呉 志良 Gifu University, 大学院・医学系研究科, 助教 (90313874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長野 功 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40283296)
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Keywords | タイ肝吸虫 / 胆管癌 / 発癌 / マイクロアレイ / 遺伝子発現 / Rbシグナル経路 |
Research Abstract |
タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)および肝吸虫(Chlonorchis sinensis)は東南アジアに広く分布しており、その感染者は3500万人と推測される。疫学調査や動物実験から肝吸虫感染が胆管癌を誘発することが明らかにされたが、その発癌機序はいまだ不明である。本研究は、肝吸虫感染発癌動物モデルを用いて、cDNAマイクロアレイ解析により癌化に伴う遺伝子を検索・同定し、その発癌の分子メカニズムの解明及び早期診断・遺伝子治療の研究に応用する目的である。 平成21年度の実験はタイ肝吸虫感染による発癌動物モデルの設立、径時的にサンプル採取、RNA抽出、マイクロアレイなどを行った。組織学の観察の結果は感染のみまたDNMA投与のみのハームスタでは炎症などが見られたが、癌化に至らなかった。一方、感染プラスDNMA投与したハームスタでは胆管癌の組織像が確認された。これらのサンブルをマイクロアレイで解析した結果は、感染後1,3及び6ヵ月において、131の遺伝子の発現が高くなり、142の遺伝子の発現が低下になったことを示した。これらの遺伝子の多くは細胞分化(Npdc1, Ltf, Enc1, Pmp22, Cebpd)、変異(Pdgfa, Frat1, Junb, Tgfb1)、増殖(S100a6, Lifr, Klf4, Stat1)、周期(Ccnd1, Id1, Cdk4, Maff)、アポトーシス(Mfge8, Lass4, Phlda3, Tnfrsf12a)に関連するものであり、感染による発癌に関与する候補遺伝子と考えられる。また、発現変化がみられる遺伝子の中に、既知癌遺伝子があるが、癌化に関連について不明である遺伝子も多くあり、今後、これらの遺伝子の詳しい解析は感染による発癌に関わる特異的な遺伝子/シグナル経路の発見が期待される。さらに、発現変化があったCyclinD1を注目し、よく知られている癌化シグナルであるRbシグナル経路に関連遺伝子Rb1, cyclinD1, Cdk4及びp16の発癌動物においての発現動態及び肝吸虫感染歴がある胆管癌患者においての発現を調べた結果はこのシグナル経路が感染による発癌に関与することを明らかにした。 平成22年度はマイクロアレイの結果を基づいて、リストした候補遺伝子から重要なものを選べ、詳しく解析を行い、癌化に関与する遺伝子及び分子マーカーを同定する予定である。
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