2009 Fiscal Year Annual Research Report
発現遺伝子解析によるベネズエラ糞線虫の感染機構の解明
Project/Area Number |
21590466
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
丸山 治彦 University of Miyazaki, 医学部, 教授 (90229625)
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Keywords | 糞線虫 / 感染幼虫 / 宿主侵入 / 遺伝子発現 / メタロプロテアーゼ / 遺伝子ノックダウン / 線虫 / ゲノム |
Research Abstract |
糞線虫や鉤虫などの腸管寄生線虫では、感染幼虫と呼ばれる感染型の幼虫が宿主の皮膚から侵入することが感染の最初のステップである。感染幼虫は外界の環境に耐え、宿主に接触すると直ちに侵入を開始する。感染幼虫による宿主侵入の分子機構の理解は、土壌媒介性寄生虫類の寄生適応の理解に貢献するだけでなく、感染制御の新手法を開発することにつながる。本研究では、感染幼虫の発現遺伝子を網羅的に解析し、宿主侵入に関与する遺伝子の発現を抑制し、侵入機構を明らかにする。 最初に、従来法によりベネズエラ糞線虫感染幼虫のcDNAライブラリを作成してクローンの塩基配列を決定し、得られたEST塩基配列のアノテーションをおこなった。その結果、呼吸関連遺伝子、シャペロン遺伝子、神経筋関連遺伝子、プロテアーゼ遺伝子などが認められた。次に、より多種類のトランスクリプトの取得と発現の定量的解析のために、次世代型シーケンサによって感染幼虫のcDNA解析を大規模におこなった。その結果、383,553リードの塩基配列から、アセンブルによって4,966本のコンティグ(cDNA配列)を得た。各コンティグの厚みは発現量を反映していると考えられるので、厚みにしたがって発現量の多い遺伝子を調べたところ、アスタシン様40kDaメタロプロテアーゼ遺伝子の発現が圧倒的に多く、これにマダニ唾液腺タンパク相同タンパク質などが続いていた。わずかずつ塩基配列に違いのあるコンティグが多数出現することから、このメタロプロテアーゼ遺伝子はファミリーを形成している可能性がきわめて高く、RT-PCRによる発現分析から、おそらくそのすべてが全生活環の中で感染幼虫期においてのみ発現していると考えられた。アスタシン様40kDaメタロプロテアーゼの機能は宿主侵入と考えられ、ベネズエラ糞線虫の感染幼虫にとってもっとも重要なタンパク質であろう。
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Research Products
(4 results)