2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590478
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
清水 健 千葉大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (70312840)
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Keywords | 志賀毒素 / 腸管出血性大腸菌 / 病原性 / 毒素産生 / NO / NO reductase |
Research Abstract |
志賀毒素の産生に影響を与える腸管出血性大腸菌の病原因子のin vitroとin vivoでの解析を行った。2006年にアメリカで起こった腸管出血性大腸菌(EHEC)O157による感染症はこれまで報告されていたものよりも高頻度で溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した。その要因を明らかにするために、この起因菌であるEHEC_O157 TW14359株の全ゲノム配列が決定され、今までのEHECのゲノム構造との違いが詳細に検討された。その結果、いくつかの病原因子の違いが存在したが、そのうちの1つとしてnitric oxide(NO) reductase gene,norVの存在が注目された。すでにゲノム構造が明らかになっているEHEC O157のSakai株やEDL933株のnorVは遺伝子内に欠失があることが明らかになっているが、TWI14359のnorVは完全な遺伝子構造をとっていた。しかしながら、このNO reductase自身がEHECの高病原性に直接関与しているのかどうかは明らかになっていない。そこでこのことを明らかにするためにnorV遺伝子置換変異株を作製してin vitroでの解析を行った。EDL933株を親株として作製したintact norV置換変異株は嫌気条件においてNO donor添加による増殖抑制は見られなかった。しかしながら、親株では増殖抑制が見られた。マクロファージ細胞は病原細菌を貪食すると、それらの菌を死滅させるためにNOを産生する。そこで、EHEC感染時のマクロファージ細胞内のNO濃度を測定したところ、intact norV置換株では親株よりもマクロファージ細胞内のNO濃度が低下していた。すでにNOが志賀毒素2(Stx2)の産生を抑制することが報告されている。そこで感染時のマクロファージ細胞内でのEIECによるStx2産生をモニターしたところ、intact norV置換株の方が親株よりもStx2の産生が上昇していた。以上のことより、EHECのNO reductaseはマクロファージ細胞内でのStx2の産生上昇に重要な役割を果たしていることが明らかになった。次に、マウスを用いたin vivoでの解析を行ったが、残念ながら現在のところ、norVの明確な志賀毒素産生性への関与や致死活性への関与は証明できていない。
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Research Products
(9 results)