2011 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌と大腸菌が保有する細胞膨化致死毒素遺伝子の水平伝播に関わる遺伝学的解析
Project/Area Number |
21590487
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山崎 伸二 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70221653)
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Keywords | 大腸菌 / 赤痢菌 / 細胞膨化致死毒素 / バクテリオファージ |
Research Abstract |
大腸菌が産生する細胞膨化致死毒素(CDT)は、少なくとも5種類存在し、赤痢菌(S.dysenteriae、S.flexnerii、S.boydii、S.sonnei)においてもcdt遺伝子を保有することが報告されている。Cdt遺伝子が陽性となったS.dysenteriae、S.flexnerii、S.boydii、S.sonneiそれぞれ9、7、2、1株で陽性となった。S.dysenteriae 6株、S.boydii 1株のcdt遺伝子の上流域をPCRで増幅し制限酵素消化でRFLPパターンを解析したところ異なる3つのパターンが得られた。PCR産物の塩基配列を解析した結果、S.dysenteriae 5株の上流にはファージ関連遺伝子(宿主特異性蛋白、膜蛋白前駆体、尾部組立て蛋白)に加え、ISの挿入が認められた。残りのS.dysenteriae 1株とS.boydii 1株の増幅産物は非特異であったが、ゲノムウオーキングでcdt遺伝子の上流あるいは下流の塩基配列を解析した結果、S.dysenteriae 1株では上流にファージ関連遺伝子(尾部蛋白、尾部組立て蛋白)やISの挿入、下流にはシトクロームをコードした遺伝子中に2種類の異なるISが挿入されていた。一方、S.boydii 1株では上流の配列は解析できなかったが、下流にIS629が挿入されていること見つかった。Cdt遺伝子の上流約10Kbの領域は、大腸菌のcdtI/IV遺伝子上流と比較して約50から65%の相同性があったが、ファージの尾部蛋白をコードする遺伝子領域やLom遺伝子では80%以上の相同性があり、この上流域の遺伝子はファージ誘導能に関わらず保存されていた。以上の結果より、cdtI/IV遺伝子はcdtII/III/V遺伝子と異なり、ラムダ様ファージで大腸菌,赤痢菌間で水平伝播し、進化している可能性が考えられた。
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Research Products
(2 results)