2009 Fiscal Year Annual Research Report
鉄欠乏性貧血由来ヘリコバクター・ピロリの新規病原因子の解明
Project/Area Number |
21590492
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
大崎 敬子 Kyorin University, 医学部, 講師 (90255406)
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Keywords | Helicobacter pylori / 鉄欠乏性貧血 / 細胞空胞化毒素 / 鉄貯蔵タンパク / 鉄制限培地 / DNAマイクロアレイ法 / 小児 / 外膜蛋白 |
Research Abstract |
鉄欠乏性貧血患者(IDA)においてH.pylori感染との関与が指摘されている。鉄剤投与による治療のみでは貧血の再発を繰り返すが、H.pyloriの除菌治療により貧血状態の改善と再発が見られなくなったとの報告がある。小児における鉄欠乏性貧血患者由来H.pyloriと貧血症状のみられない患者由来の菌株の性状比較を行った。 消化管出血のないIDA小児4例および年齢・性をあわせた対照小児4例から分離したH.pyloriを対象とした。鉄含有の培養条件として、Brucella brothに7%の馬血清を添加して行い、鉄制限の培養条件としてさらに50μM Deferoxamine mesylate (DFM)添加培地を用いた。対数増殖期の各菌株より総RNAを抽出し、マイクロアレイ法にてIDA由来菌株と対照菌株のあいだで双方の培養条件にともなう各遺伝子発現の差を比較した。 鉄関連遺伝子群として、鉄貯蔵タンパクであるpfr遺伝子の発現は両群ともに鉄制限培地での増殖時に鉄含有培地と比べて0.1から0,3倍に減少した。また、鉄イオン輸送タンパクであるfecA1およびfrpB1遺伝子の発現は4.0-17.3倍増加した。病原性関連遺伝子のうちvacA遺伝子の発現がIDA患者由来株で高かった(鉄含有培地使用時)。さらに、培養上清中に認められたVacA毒素の産生量および培養細胞を用いた毒素活性の比較においてもIDA患者由来株で4株中3株に高い毒素活性が示され、対照群においては4株中1株が毒素産生株であった。この結果はマイクロアレイ法の結果とよく一致した。これらの解析の結果から、IDA患者由来株は、対照菌株と比較して、細胞空胞化毒素の産生に亢進が認められ、何らかの機序でIDAとの関わりがある可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)