2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト敗血症ショックの実験的モデルにおける一酸化窒素誘導の機序と治療法の確立
Project/Area Number |
21590499
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
小出 直樹 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (50308962)
|
Keywords | リポ多糖 / ガラクトシルセラミド / 肺傷害 / 誘導型NO合成酵素 |
Research Abstract |
我々は、実験的エンドトキシンショックモデルとして、ガラクトサミンとリポ多糖を用いた急性肝炎モデルを主に使用してきたが、ガラクトシルセラミドとリポ多糖を用いた新たな実験的モデルでは、肺傷害が主病変で、より臨床に近いエンドトキシンショックが誘導される。ガラクトサミンを用いた系でも、ガラクトシルセラミドを用いた系でも同様にリポ多糖によるNO(一酸化窒素)の誘導が重要であることが今回確認された。NC/NgaマウスはVbeta8陽性T細胞とVbeta8陽性照T細胞がほぼ欠損していることが知られているが、LPSによるIFN-gamma誘導が肝臓においてされにくく、そのため、肝細胞におけるNO合成酵素(iNOS)の誘導がほとんど認められなかった。その結果、ガラクトサミンとリポ多糖による致死反応に極めて耐性であった。ガラクトシルセラミドはValpha14陽性NKT細胞を強く活性化し、IFN-gammaなどを強く誘導することが知られている。ガラクトシルセラミドを前処置するとNC/Ngaマウスのガラクトサミンを用いたエンドトキシンショックのモデルへの耐性を克服することがわかった。驚いたことに、ガラクトシルセラミド処理によりVbeta8陽性T細胞とNKT細胞の数はかわらず少数であったが、IFN-gamma産生は回復され、エンドトキシンショックのモデルへの感受性を回復していた。iNOSの発現も回復されていた。この結果はエンドトキシンショックモデルへのNOの重要性をさらに強調している。また、ガラクトシルセラミドとリポ多糖を用いた肺傷害モデルでもあらたな知見が発見された。ガラクトシルセラミドを用いた系では肺傷害が認められるが肝傷害が少ないが、その理由が肝臓と肺に局在するNKT細胞の性質の違いにあることが明らかになった。肝臓に比べ、肺のNKT細胞はガラクトシルセラミドによりIL-4を誘導しにくく、そのためにSOCS1などのphosphataseが誘導されず、ガラクトシルセラミドによる致死モデルによって誘導されるIFN-gammaのシグナルが制御できないことが、傷害につながると考えられた。また、肺胞上皮ではIL-10が弱く恒常的に発現され、ガラクトシルセラミドによる致死モデルによっても新たに誘導されないことも原因と考えられた。
|