2009 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病に対する免疫療法・ウイルス療法の開発
Project/Area Number |
21590504
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 貴 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10282774)
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Keywords | MHC-I / Single chain trimer / HTLV-I / ATL / CTL / Tax / Epitope / Vaccinia |
Research Abstract |
ラットHTLV-I感染モデルにおいて、抗HTLV-I免疫を効率的に誘導することを目的として、これまでの研究で確立したHTLV-I Taxエピトープ(Tax180-188)を提示するMHC-I単鎖三量体を応用し、レンチウイルスベクターおよびワクシニアベクターを用いた単鎖三量体発現系を構築した。樹立した両ベクターをそれぞれの感受性細胞に感染させ、Tax180-188特異的CTL細胞株(4O1/C8)と共培養したところ、どちらのベクターを感染した細胞においても4O1/C8細胞からのIFN-γ産生誘導が確認された。このIFN-γ産生はHIV-1 Envエピトープを提示する単鎖三量体発現ウイルスベクター感染細胞では誘導されないことから、構築したベクターがTax特異的にT細胞を活性化できることが確認された。次に、ベクターとして用いているワクシニアウイルスの腫瘍溶解性ウイルスとしての有用性について、ワクシニアウイルスをHTLV-I感染ラットT細胞株のFPM1細胞に感染させて解析した。その結果、FPM1細胞においてはワクシニアウイルスの増殖が起るとともに、その後にHTLV-I感染細胞が死滅することが確認された。このウイルス増殖、および細胞死は正常T細胞や、Tax特異的CTL細胞株では起らないことが確認されたことから、HTLV-I感染細胞の中には、ワクシニアウイルスによる腫瘍溶解活性に対する感受性が高いものが存在することが示された。本研究の成果は、Taxエピトープを提示するワクシニアウイルスが、Tax特異的CTL誘導と、HTLV-I感染細胞に対する腫瘍溶解作用の両面で有用であることを示唆しており、今後、HTLV-Iによる成人T細胞白血病の発症予防・治療に役立つ可能性が期待される。
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