2011 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病に対する免疫療法・ウイルス療法の開発
Project/Area Number |
21590504
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 貴 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10282774)
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Keywords | MHC-I / Single chain trimer / HTLV-I / ATL / CTL / Tax / Epitope / Vaccinia |
Research Abstract |
ラットHTLV-I感染モデルにおいて、抗HTLV-I免疫応答とHTLV-I感染細胞の溶解を同時に誘導することを目的として、HTLV-I Taxエピトープ(Tax180-188)を提示するMHC-I単鎖三量体を発現するワクシニアウイルスベクターを構築した。樹立したウイルスベクターを感染させたHTLV-I非感染ヒト由来細胞は、ラット由来Tax180-188特異的CTL細胞株(401/C8)のIFN-γ産生を誘導できることから、ラットMHC-Iによりエピトープが適切に提示されていることが確認された。次に、ワクシニアウイルスの腫瘍溶解性ウイルスとしての有用性について、これまでに樹立した種々のHTLV-I感染ラットT細胞株を用いて解析したところ、FPM1細胞等の多くの細胞株において、ワクシニアウイルスの増殖とともに、細胞増殖が抑制されることが確認された。他方、FCMT1細胞においては、ワクシニアウイルスが増殖している条件下で、細胞増殖抑制が弱い傾向が認められ、腫瘍溶解活性に抵抗性を示すことが示唆された。また、FPM1と401C8の混合培養中にワクシニアウイルスを感染させた場合には、FPM1細胞のみに感染して細胞死が誘導されるとともに、CTL非存在時に比べてFPM1細胞の細胞死が増強されることも確認できたことから、ワクシニアウイルスとCTLとの相乗効果の可能性も示唆された。さらに、同系ヌードラットを用いたHTLV-I腫瘍モデルにおいて、ワクシニアウイルスによる腫瘍溶解活性により腫瘍増殖が抑制可能であることが確認された。本研究の成果は、Taxエピトープを提示するワクシニアウイルスが、Tax特異的CTL誘導と、HTLV-I感染細胞に対する腫瘍溶解作用の両面で有用であることを示唆しており、今後HTLV-Iによる成人T細胞白血病の発症予防・治療に役立つ可能性が期待される。
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