2011 Fiscal Year Annual Research Report
アクセサリー蛋白質による(-)鎖RNAウイルスのゲノム複製制御
Project/Area Number |
21590510
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂口 剛正 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70196070)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 崇 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (70419498)
|
Keywords | ウイルス / パラミクソウイルス / センダイウイルス / ゲノム極性 / C蛋白質 / プロモーター |
Research Abstract |
センダイウイルス(SeV,パラミクソウイルス科レスピロウイルス属)のC蛋白質欠損ウイルスでは本来の(-)鎖RNAゲノムだけではなく、相補的な複製中間体の(+)鎖ゲノムをもつウイルスが顕著に増加する。この結果は、C蛋白質がウイルスゲノム複製においてゲノム極性の制御に関連している可能性を示唆している。この仮説を検証した。野生型ウイルスを細胞に感染させて、細胞内およびウイルス粒子内のゲノム合成量とゲノム極性を経時的に検討したところ、感染後早期(6時間)までは陽性鎖が増加するが、その後、陰性鎖が増えるという変化が見られる。一方、C蛋白質欠損ウイルスでは、陽性鎖の比率は増大し続ける。このことからC蛋白質が陰性鎖ゲノム合成に関わっていることが明瞭に示された。ゲノム両端のプロモーターを入れ替えたSeVの実験から、C蛋白質はリーダープロモーターを抑制し、トレーラープロモーターは抑制しないというプロモーター特異性が明らかになった。一方、ラブドウイルス科のVSVでは、陰性鎖と陽性鎖の比率は感染後の時間に関わらず一定であった。このウイルスでは異なるゲノム合成の調節方法をとっていると考えられる。C蛋白質に相当すると言われるV蛋白質をもつルブラウイルス属のヒトパラインフルエンザウイルス2型のV欠損ウイルスでもこのような陰性鎖・陽性鎖の比率の変化は見られない。また、これらの調節が不全であるとインターフェロンβ(転写因子IRF3)の誘導が起こることが明らかになった。インターフェロン誘導の原因として、自然免疫の細胞内受容体に感知される異常RNAができる、誘導を抑えるウイルス蛋白質(C、V)の量が相対的に低下するという可能性が考えられるが、新たにRNAとN蛋白質複合体の構造が異なっている可能性を見いだした。これらのことは国際学会を含む学会で発表し、現在、論文にまとめている。
|